「2016桜見物」
2016年桜見物。
今年は2日に渡っての見物。場所も様々。
まずは、普段車を運転しないのだが、今回運転する必要性に迫られ・・・ならば、と地蔵禅院をピックアップ。その他、桜の有名どころを時間制限の中、諸々と巡ろうと思ったのだが思うようにいかず・・・偶然の酬恩庵へ。
なお、地蔵禅院の道のりの途中、『平成の名水百選』に選ばれた玉川の両堤の桜を見ることができた。見事に咲き誇っていて綺麗だったが・・・久し振りの運転で精一杯で余裕がなく、写真は撮れずじまい。車のない生活に慣れ過ぎてしまったようだ・・・
地蔵禅院の桜といえば、なんといっても京都府指定の天然記念物である『地蔵院しだれ桜』(写真上)が有名だ。
植樹されたのが享保12年(1727)というから、樹齢300年の大変な古木だ。なお、昭和22年に枯死した円山公園の初代しだれ桜は地蔵禅院の先代の親桜から株分けしたもので、『地蔵院しだれ桜』と母樹が同じなのだそうだ。つまり、『円山公園の初代しだれ桜』と『地蔵院しだれ桜』とは兄弟木に当たる。
兄弟木が枯死しておよそ70年。その華麗なる姿は未だ健在だ。
ちなみに、円山公園のしだれ桜は現在三代目。
訪れたのは4月上旬で、花弁の層に厚みがなく、すでに満開を過ぎた感があったが、もしかしたら老齢の為に元々花弁の量は少ないのかもしれない。
それと、やっぱり天気がなぁ・・・見事なる曇天で薄桃色の花弁と同化してしまい見た目のボリューム感が軽減されてしまっていたのかもしれない。
少しハードル(華やかさの)を上げていた影響もあり、期待値に比べると少々物足りなさを感じてしまった。まぁ、勝手な先入観です。
以上が一目見た感想。ここからは、現物を目の前にしてじっくり眺めてからの感想。
趣がある。
なんだか、当たり障りのない感想となってしまったが、華やかさに物足りなさがあったとしても、古木なりの姿の良さがあり、またその先に広がる眺望が、人生ならぬ樹生とでもいえばいいのだろうか、その眺望の遍歴を見守ってきた長い年月の想いを想像し得る。達観の姿。孤高の佇まい。曇天の薄暗さ故の印象かもしれないが、そこには静謐の一時がたゆたう。
もしこれが晴天であったならば・・・ノリノリのご老体をイメージしていたかもしれないが。
そして思索から覚めた現実では、天気に関わらず騒々しさに満ちている(桜に感激する日本人の諸言動。いや、いい事だ)
地蔵禅院の境内には、前出のしだれ桜の他にも、堂宇の裏手も含め、およそ30本の桜が植えられているそうで、各所に桜を見ることができる。ただ、それぞれ種類は違うようなので、一斉に咲き誇るという姿を見ることは難しそうだが、順々に長い期間を楽しむことができそうだ。
京都にての地図(googleマップ)
予定では笠置山へ向かう予定だったのだが、時間の都合上、偶然通りかかった酬恩庵へ変更。
酬恩庵といえば、一休さんこと一休宗純禅師が晩年を過ごされ、墓所も置かれていることで有名だ。
ただ、桜のイメージはなかったので、その姿をみることができるかどうか・・・
と、思っていたら、駐車場に見事な桜木が(写真上部)
遠く境内の方を眺めれば、花弁が盛り上がる桜木の上部が窺えた。これは結構見ることができるのかも、と車を置いて境内へ向かった。
主な拝観場所である庫裏や方丈周辺には、一部庭木として植えられた小振りの桜が見えるばかり。
庫裏の西側、本堂を抜けた裏手に広がる境内に向かうと、数本の桜を見ることができたが、一部はすでに時期を逸していてほとんどの花弁は散ってしまっていた。そんな中、境内奥の池の周囲の桜(写真下部)は丁度よい頃合いで咲き誇っていた。
ただ、この周辺の桜はそれほどの高さを持っていない。では、駐車場から眺められた桜はどこにあるのかと探してみると、どうやら参道を登り切ったすぐ奥にある墓地に植えられた桜だったようだ。さすがにそこまでずかずかと踏み入るには気が引けたので、墓地に入らず眺められる範囲で愛でさせてもらった。
酬恩庵ホームページ⇒http://www.ikkyuji.org
ここからは別日。
天候は良し。ただ、4月の中旬で時期はだいぶ過ぎてしまった感があるが、まだ残ってくれているだろうか。。。
まず訪れたのは宝積寺。
やはり満開の時期は過ぎ、散ってしまったか、散りかけの木が多かった。
仁王門を潜り、左手の不動堂周辺にも桜を見ることができるが、見どころとしては宝積寺のシンボルともいえる三重の塔の前に咲く『千年桜』(写真上部)と名付けられた桜だろう。角度によっては三重の塔を覆い隠すほどに枝を広げ、満開であったならさぞかし三重の塔との並びは見応えがあっただろう。すでに若葉が目立ち始めていたので、それもまた味わいはあるのだが、桃色の華やかさを主眼とした視点でみると、残念ながら影を差しような形となっていた。
本堂からその周辺にかけて数本の桜木が植えられていた。
本堂の右手、閻魔堂の左手には『縁結びの桜』(写真下部)と名付けられた桜木が植えられており「この桜は京都嵯峨野の桜守、佐藤藤右衛門氏の苗床より移植したものです」と立札に説明が記されていた。
時期さえ合えば、宝積寺は桜の見所が多いように感じられた。
京都にての地図(googleマップ)
次に訪れたのは離宮八幡宮。
境内には『河陽 祇園しだれ桜』と名付けられた桜木も植えられていたが、見事に散っていた。
また境内には数本の桜木が植えられており、多くなくも時期さえ合えばそれなりの桜が楽しめそうだが、最後のひと香りを残す本堂右手の桜木も、大部分に若葉を芽生えさせ春の終わりを告げていた。
離宮八幡宮ホームページ⇒http://rikyuhachiman.org/
次は京都御苑。
個人的に京都御苑の桜といえば『出水しだれ桜』を思いだし、比較的開花が早いという印象なので、もう桜は全部散ってしまっているかな、と思っていたのだが、結構残っていて嬉しい誤算。
写真上部の桜は、京都御所の清所門前の桜。京都御苑の『桃・桜みどころマップ』を見ると『車還桜』と呼ばれるものでよいのかな?ほぼ満開といっていいだろう姿を見せてくれていた。
写真下部は『近衛のしだれ桜』。
しだれ桜は時期が早いという印象があるので、それこそすでに花弁を散らせて緑に染まっているかなと思いつつ訪れてみたのだが、だいぶ散らせてはいたが、まだまだ濃い桃色の花弁の多くを纏い、しなやかな枝をそよ風にゆらしていた。
また本数も結構あり、京都御苑での一番の桜の見所であると思えた。
これだけの広い敷地に様々な種類の桜木があるということは、長い期間楽しめるものなのだなと感心。
京都御苑ホームページ⇒https://www.env.go.jp/garden/kyotogyoen
最後に京都御所。
御所で桜といえば、なんといっても紫宸殿前の左近の桜が有名だが・・・残念ながら見事に散っておりました。
その他に桜は、参観の順路でいうと、最後の御常御殿の南側を抜けて散会となる庭に、数本のしだれ桜が植えられていた。
ところが、これもまた種類や場所の影響なのか、ほぼ花弁を散らせてしまっていた。唯一、写真の木だけが花弁を留めていた。残念。
京都御所という特別な場所柄だけに、紫宸殿前の左近の桜を含め、満開の時に訪れることができたならば、普段と違った桜の趣を感じることができるかも知れない。
京都御苑ホームページ⇒http://sankan.kunaicho.go.jp/guide/kyoto.html
2016年桜見物。
今年も勝手にベスト3の順位付けをするとするならば、
1位は宝積寺。訪れてみたら意外と桜が多くて好印象。桜としての知名度がそれほど高そうでもないのに、時期さえあえば、より満足感を得られそうな期待感を込めての順位。
2位は地蔵禅院。こちらは逆に桜として有名だけに期待のハードルを上げ過ぎた結果としての順位。眺望も込みでの桜の美しさは間違いないのだが、いかんせん今回は天気が悪すぎた・・・
3位は京都御所。安定感抜群。広々とした敷地、広がる空故の開放感と静けさ。日常に和む人々。二つの世界の狭間にあるような、特別だけれども特別ではない場所。特別だけれども、特別ではない桜。ああ、綺麗です。
桜見物、といいつつ今年はどちらかというと「ついでの桜見物」感が強かったが、逆に桜をメインにしなくても桜に出会えてしまう京都という土地柄。京都と桜の関係の奥深さ。
だからこそ、春になれば人々の足は自ずと京都へと向いてしまうのだろう。
今年も京都に春がきましたようで。
(2016/04/21)