「2018桜見物」

 

 この冬は寒かった。
 その経過から、なんとなく今年の桜の開花は遅れるのではないかとイメージとして考えていたのだが、とんでもなかった。突然気温が上がり始め、早い春・・・を跳び越して、もはや初夏の陽気に誘われて固く蕾みを閉じていた桜の花が次々と開いていった。なんでも、大阪では観測史上最速の開花であったとか。
 ちょっとのんびり構えていたので、慌てて今年の桜見物のプランを練る。
 さて、どこに行こうか。

離宮八幡宮

 まず訪れたのは離宮八幡宮。
 『2016桜見物』 でも訪れた場所で、その時は時期が遅くなってしまって、境内の桜はほぼ散った状態だったが、今回は満開のタイミングに合わせることができた。
 写真は、前回は完全に花弁を散らせて葉桜になっていた『河陽 祇園しだれ桜』。境内の外からも望める高さがあり、しだれ桜というにしては、しっかりと花の傘を広げていた。

 その他、境内の桜もほぼ満開であり、桜の本数自体は決して多くはないが、この時期の見所をそれなりに有していると言える。

離宮八幡宮ページ⇒http://rikyuhachiman.org/

宝積寺

 次に訪れたのは宝寺こと宝積寺。こちらも2016に訪れており、その時は多少の花弁を残していたが、やはり時期はずれてしまっていた。
 今回は、こちらも満開。仁王門を入ってすぐに左手に鐘楼と、その向かいに不動堂が向い合っているのだが、その周辺が一番の桜の密集地であり、見応えのある桃雲を連ねている。
 更に宝積寺にはシンボルともいえる三重の塔の前に咲く『千年桜』があるので、これを楽しみに来たのだが・・・なんてことだ!枝が悉く伐採されて一切花を付けていない(※写真下部は別の桜)これはどういうことだ?前回は遅れたながらも、華麗な姿を見せてくれていたのに。事情は確認できなかったものの、おそらく景観を理由に伐採することはないだろうから、もしかしたら害虫にでもつかれて切らざるを得なかっただろうか。ただただ、この結果は残念だ。

 その他、本堂前にも数本の桜が咲いていた。閻魔堂横の『縁結びの桜』は万遍にという感じではななかったが、寄り集まった濃い目の桃色の花弁を、多く細い枝に実らせていた。

 なお、この日は平日であった為か、桜目的の観光客の姿は多くなかった。どちらかというと、天王山登山に立ち寄る方の姿が多く、騒がしさもなく桜を楽しむことができた。

京都にての地図(googleマップ)

観音寺(山崎聖天)  

 次に訪れたのは山崎聖天こと観音寺。
 境内参道入り口に、早速白い花弁が特徴のしだれ桜が、密度はないが緑の若葉を交えつつ爽やかに咲いていた。
 更に坂道の参道を進む右手に多くの桜が植えられており、桜の林と言えるような光景となっていた。

 門を潜り細い急な階段を登って本堂前に出る。
 本堂右手に宝積寺と同じ京都嵯峨野の桜守、佐藤藤右衛門氏の苗床より移植したしだれ桜が、こちらも濃い目の桃色の花弁を、多くはないが鮮やかに開いていた。ただ、こちらは宝積寺のように名は付けていないようだ。
 他には本堂裏手の斜面にちらほらと。それと、本堂に向って右手にある御手洗の裏手に大きく、そして満開の花弁を見せ付ける桜の木が植わっていた。更に、その奥に建物が連なっているのだが、その周辺にも数本の桜が植わっており、少しずつ違った色合いの花弁を開いていた。

 なお、こちらは登山客もなく、観光客もほぼいない状態だった。
 この桜の量にしては、意外な閑散状況。
 穴場とは、こういうことを言うのだろうか。

京都にての地図(googleマップ)

 ここからは阪急大山崎駅から電車に乗り、一路西院へ。
 西院から徒歩で太秦方面へ。
 途中、西院春日大社猿田彦神社を覗いてみたが、桜の姿はなかった。

木嶋坐天照御魂神社(蚕の社)

 次に訪れたのは蚕の社こと木嶋坐天照御魂神社。
 鳥居の左右に一本ずつ桜の木が植えられ、それぞれ満開状態で境内の状況に期待を窺わせていたが、境内に入ると桜の木は一本もなかった。なので、ここでの桜見物は鳥居部分だけ。となる。

 ただ、初三柱鳥居を前にしテンションは上がった。。。

京都にての地図(googleマップ)

広隆寺

 最後に訪れたのは広隆寺。
 楼門から入り参道を進む左右に、ところどころに桜の姿を見ることができた。ただ、これらは山桜とのことで、ソメイヨシノのような華やかさはなく、少し時期が早かったのもあり、また背が高くないこともあって少々地味な印象を受けた。

 一方で霊宝殿へ向かう順路では満開の桜がお出迎え(写真)。旧霊宝殿前の2本の桜も満開を迎えており、広隆寺境内における今回の見応えはここに集約されていた。

京都にての地図(googleマップ)

 

 さて、今回訪れた中でのランキングを決めるならば。
 1位は宝積寺。桜の量も豊富で、かつ観光客は少なめ。桜見物に望むポイントとして実にバランスが良い。ただ、残念で仕方ないのは『千年桜』の枝が落とされていたことだ。その可憐な姿がもう見られないとは、桜見物の大いなる損失だろう。
 なお、桜とは関係ないが、この宝積寺は天王山の中腹にあり、結構な坂道を登ってくる必要があるので、訪れる際には注意して頂きたい。個人的にも登りはしんどいだけでまだ良いのだが、下りは膝をやられそうで慎重になった程に。。。
 2位は観音寺。桜の量だけでいえば宝積寺を上回るのだが、その多くが境内の山腹に植えられており、お寺の建物との共演がない為『京都の桜』の魅力としては戦力外に。ただし、この時期にあっても静かな境内はありがたく、本数は少ないが建物と共演する『京都の桜』をゆっくりと楽しむには適した場所といえるだろう。
 なお、観音寺の境内は高台にあり、そこからは「2014桜見物」で訪れた背割堤が眺められ、膨れ上がった桜の連なりに、この距離からこの存在感か、と苦笑いを浮かべてしまった。
 3位は広隆寺。桜を目的とするには正直物足りないが、国宝第一号、弥勒菩薩半跏思惟像とのセットではどうだろうか。華やかな桜は当然良いが、菩薩像を拝した後に眺める控えめな白い花弁の山桜も、また沈思する菩薩像に通じるものがあり趣があるというものだ。

 ここ数年の桜見物は、いまいち天候に恵まれていなかったが、今年は好天の桜見物となり、やはり曇天よりも晴天の下にこそ桜の姿は映える、と喜ばしかった。
 そして、今回は決して多くの桜を目にした訳ではないが、その分多くの観光客の頭を見ることもなく、ゆっくり静かに桜を楽しむことができた。
 人それぞれ桜の楽しみ方の好みはあるだろうが、やはり、桜見物は静かな中で楽しむに越したことはないと思うのである。

(2018/04/11)

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