「2011紅葉見物」

 

 11月某日の日曜日。週間天気予報では数日前から雨マークがついていて、最悪のコンディションを覚悟していたが、幸いにも当日は曇の合間より太陽が顔を覗かせる天気に恵まれた。
 少々出発が遅れたこともあって京都についたのは午後に入ってから。
 今回の目的地は一乗寺周辺なので、四条河原町から市バスの5系統に乗る必要があった。しかしだ、バス停で待っていてもバスがなかなか来ない。その上、待ち人増える増える。曜日が曜日だったので覚悟はしていたが、更なる波乱の様相。
 ようやく到着したバスには、すでに多くの乗客の姿が。それでも幸いに乗車することができたが、当然のようにぎゅうぎゅう詰めに。満員のバスは各バス停に停まるのだが、ほぼ新たな乗客を収容できずに進んで行く。
 また道路もひどく混んでいる。特に平安神宮から永観堂にかけての道路が混んでいて、なかなか進んでくれず、人の圧迫にほとほと疲れてしまって、途中下車して帰ってしまおうかと思ったほどだ。
 永観堂で多くの乗客が降り、銀閣寺辺りで更に乗客が降りてようやく空いてきた車内。普段なら3、40分もあれば着く一乗寺下り松のバス停に、完全に1時間オーバーで到着した。時間はすでに午後3時。この時期は寺社の閉門時間も早くなっているので、さっさと回らなければいけないと早足で歩きだした。

 

金福寺

 まず訪れたのは金福寺。
 階段を上って門を潜る。すると早速右手に色づいた木が一本立っていた。
 境内に入ると本堂南の庭園にて、おそらく木の種類によるのだろうが、まばらではあったが紅葉を見ることができた。
 それでも、やはり今年はこれまで暖かかった影響だろうか、色づきが遅いように思われる。帰り際に気付いたことだが、金福寺のパンフレットの表紙には門前左手に赤く染まった紅葉の写真が使われているのだが、訪れた日の当の木は上部の葉がようやく色づき出した程度で、パンフレットの写真のような姿が見れるまでにはもう少しかかりそうだった。11月も後半に入ろうかというのに、この周辺の色づきようとしては遅いのではないだろうか。
 また、金福寺といえば芭蕉庵が有名だが、残念ながら芭蕉庵周辺の木々は色づいていないのか、色づかないものなのか、青々とした葉を茂らせていた。

 紅葉の名所のような一面紅葉の圧巻の光景を見ることはできないが、観光客の姿は思ったよりも少なく、もちろん訪れる時間帯も関係があるのだろうが、少しゆっくりと紅葉を含んだ庭園を眺めるには良い場所かもしれない。

京都にての地図(googleマップ)

 

圓光寺

 次に訪れたのは圓光寺。
 参道を歩き階段を上った先に、本堂の西側にこちらもまず一本の木が鮮やかに色付いていた。
 境内に入ると、そこに広がるのは『十牛の庭』と名付けられた庭園で、最盛期には今少し早い様子だったが、多くの木々が色付き、暖色のコントラストを成してた。本堂に上がり座敷のから眺めると、まるで額縁に納められた絵画の様に、限りなき奔放な美しさもよいものだが、空間を切り取った限りある中の美しさもまた、味があるというものだ。紅葉の最盛期には、さぞかし一流の美を眼前に示してくれるだろう。
 『十牛の庭』以外にも、ポツポツと色付いた木々は見られたが、圓光寺においては『十牛の庭』に勝るものはない。
 また、紅葉の眺めとは若干ことなるが、圓光寺に訪れたならば裏山に上ってみるのが良い。圓光寺の方と思われるお坊さんが頻りに観光客に勧めていたが、そこからは京都の街が一望できる。

京都にての地図(googleマップ)

 

狸谷山不動院

 最後に訪れたのは狸谷山不動院。
 夏場には何度も訪れている場所だが、秋に訪れるのは初めてだった。ただなんとなくの山の中にあるという先入観から紅葉も進んでるんだろうなぁ、と訪れてみた訳だが、これがまた全然色付いてなく。確かに紅葉というキーワードと狸谷山不動院を結びつけた情報を見たことはなかったが、なるほど、こういうことか、と。唯一見付けた紅葉を、本堂がある山腹まで登ってきた苦労を顧みつつ激写!

狸谷山不動院ホームページ⇒http://www.tanukidani.com/

 

 一乗寺付近で紅葉といえば詩仙堂なのだが、今回は諸事情(ただの横着ともいう)により訪れなかった。

 到着した時間も時間で、結局紅葉をしっかりと愛でられたのは金福寺と圓光寺だけだったが、この2寺院を比較るすると間違いなく圓光寺の方が紅葉への心意気が強く見受けられた分、見栄えもやはり圓光寺の方が良かった。観光タクシーの運転手と思われる方も、お客さんに対して「紅葉の時期のコースには必ずここを入れるんです」と語っていたので、知る人ぞ知る、といった場所なのだろう。
 ちなみに、圓光寺のお坊さんがこれまた頻りに観光客に勧めていたが、新緑の頃もまた良いのだとか。
 金福寺の方は、もちろん庭園の手入れは行き届いているのだが、どこかそっけない。ただ、そのそっけなさは悪い意味ではなく「よかったら見ていってください」といった謙遜とでもいおうか。個人的にはそのそっけなさが有難かったりする。自分の思うままに、自分の思うペースで楽しむ。見栄えは確かに圓光寺に劣るかもしれないが、観光客も少なめの金福寺ではゆったりした紅葉見物の一時が望めるかもしれない。

(2011/11/29)

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