<野菊>
<店舗名:かぎや政秋>
<価格(税込):648円>
落雁といえば、お茶席でおなじみのお菓子。
通常、その材料は米粉などを水飴や砂糖を混ぜて煉り、形作って乾燥させたもの。なので、着色により様々な色合いを表現することはあるが、通常はあくまでも甘味を楽しむもの。
ザ・和菓子、を代表する一品だろう。
ところが、今回紹介する商品は、なんとアーモンドを粉末状にし練り込んだ落雁。おお、なんと奇抜な。
どんな出来になっているのだろうと、好奇心を惹かれてしまった。
『野菊』というだけあって、アーモンドの色合いが野趣を感じさせる。なにやら力強いもの、エネルギーに満ちた様な。。。
蓋を開けると、濃いアーモンドの香りが漂う。商品の上に乗せられた紙に滲むものがあるのは、アーモンドの油分か。
手に取ると、とても軽く、一口噛んでみれば、食感も軽い抵抗の後にはパサリと崩れる。通常、口にしたことがある落雁の中でも、とてもパサパサとした舌触りで、唾液をとても奪われる感じ。これはアーモンドを使用している故か。
風味は、甘味は強くない。アーモンドの風味が強い。甘味は中心に乗せられた黄色い部分に強く感じ、アーモンドの風味を楽しみつつ、甘味もしっかりと押さえるよう工夫されているようだ。
とにかくアーモンドが主役の落雁。
抹茶に合わせるよりも、コーヒーなどに合いそうな風味で、一風変わった美味しさだ。
かぎや政秋のサイトによれば、
「『野菊』は、先代がモロッコ旅行をした時に食べた 地中海アーモンドをヒントに考案しました」
との事。
まさに、異国からインスピレーションを得たエキゾチック落雁。
繊細さよりも、少し荒々しく、力強く。
『野菊』とは、言い得て妙なネーミングだ。
と、書いた後で、違う解釈に思い至る。
なぜ『野菊』なのか。つまりアーモンドの色味は土の色の見立てではないだろうか。
そして、中心部にだけ、本来の菊の色味である黄色が見えている。
土に塗れながらも、その一点に現れた菊の美。
それはまるで、庭一面に咲いた朝顔を切り落とし、一輪だけを茶室に飾り豊臣秀吉を茶室に迎えたという千利休の逸話を思い出させる。
『わび』の精神。
つまり、アーモンドの風味にエキゾチックな趣向を覚え、お茶との隔絶を感じたのだが、その精神性の部分ではしっかりと『茶道』の王道を歩んでいるのではないだろうか。
更にこの『野菊』の粋なところは、一点の美に甘味を集中させているところだ。そうすることで、より『美』を引き立たせている。
まさに和魂洋才の落雁とでも呼べようか。
さて、作り手の真意はいかに?
とりあえず、個人的にはすっきりと自己満足。。。