いちじく糖菓/いちじくパイ

<いちじく糖菓/いちじくパイ>

<店舗名:与楽>
<価格(税別):いちじく糖菓135円/いちじくパイ250円>

 

 無花果(いちじく)。実に馴染みの薄い果実である。
 食用というよりは、知識としての無花果が先行する。それは旧約聖書に書かれたエデンの園でのアダムとイヴが食べたという禁断の果実が無花果であったという説(他にも林檎や葡萄との説もあるようだ)からだ。その情報が先にあったものだから、それと個人的な育った環境における馴染みの薄さから、どこか無花果とは海外の果物で遠い存在、というイメージが強かった。
 馴染みの薄さは今も同じで、まったく口にしたことがない訳ではなかったが、例えスーパーの果物売場にいちじくが売っていたとしても、手を出そうとは思わない。というか、どうやって食べていいのかがわからない(まぁ、切って口に運べばいいだけだろうが・・・)

 そんな遠い存在の無花果。それがなんと、京都の城陽市で栽培されているのだそうだ(調べてみれば、結構日本各地で栽培されていることを知り、イメージはただの無知からきたものだと判明)
 近畿農政局のサイトによれば『城陽市のいちじくは、昭和8年に寺田地区の岩見氏が奈良県から桝井ドーフィンの苗を導入して栽培したのが始まりといわれています。――当地域のいちじくは果型、玉そろいが良く、果皮の着色が鮮明で食味も良いので、消費者から好評を得ています。――』とのこと。
 いや、知らなかった。

 そんな城陽市特産の無花果を、与楽では積極的に商品にしているようだ。

 まずは『いちじく糖菓』から。
 見た目はまるで干し柿。ただ、特殊な製法で蜜炊きにしているようで、その色合いは独特だ。言い方は悪いかもしれないが、しっかりと加工処理された無花果のミイラ、とでも言おうか。個人的感想・・・
 蜜炊きしているので、甘い香りが漂うのかというと、これといった香りは漂わない。見事なまでに乾燥が進んでいるようだ。
 食べてみる。食感は・・・安っぽい表現となってしまうが、グミの様。弾力があるり、くちゃくちゃと粘りつく。唾液に浸れば、やがて溶けだし馴染み出す。
 味は、まさに無花果。そして蜜炊きしてるので、当然のように甘い。
 商品に同梱されていた説明書きによれば、「お好みのサイズにカットしてお召し上がりください」とある。なるほど、丸かじりするような商品ではなかったのね。うん、甘い。
 こういった菓子は量を食べるものではなく、お茶請けとしてちびちびと口にするのがベストなのだろう。
 ただ、しっかりとした無花果の風味はさすがだ。

 次に『いちじくパイ』。なんでも、第22回全国菓子大博覧会『大賞』受賞した一品だとか。
 見た目は別段、特別な外見ではない。パイのお菓子っぽい外見。
 香りは小麦とバターの香り。いちじくのなんらかを感じることはない。
 では一口。
 パイの食感は・・・期待したパリパリ感はなかった。どちらかというとしっとりとしており、歯応えはポロポロと崩れるというよりは、しっかりと磨り潰す感じの生地になっている。そして中には甘煮した無花果が入っていて、こちらはトロリとジャムのような柔らかさ。
 無花果です。間違いない。
 原材料を見れば、砂糖、無花果、小麦粉、バター、鶏卵、クエン酸。なので、中の無花果部分に使われているのは、保存料のクエン酸を除けば砂糖と無花果だけ。実にシンプル。なるほど無花果。
 無花果独自の風味を楽しみながら、普通に美味しく頂きました。

 今流行の『地方創生』においては、地域にある資源をいかに活かすかが重要な焦点となっており、またその視点こそがそれぞれ地域の独自性を生み出す切っ掛けとなっている。
 城陽市で栽培された無花果を使った与楽のお菓子もまた、そんな地方の独自性の魅力に満ちている。
 無花果あってこその創生菓子。
 面白い!と思い、今回は購入に至った。

 同店別商品:いちご大福

(2016/04/28)

与楽ホームページ⇒http://www.kyougashi-yoraku.com

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