きな粉玉

<きな粉玉>

<店舗名:吉祥菓寮>
<価格(税込):864円(7個入り)>

 

 きな粉の語源は元々「黄なる粉」から生まれたという。
 煎った大豆を挽いて粉末状にしたものだ。
 きな粉といえば、引き立て役、といったイメージを抱く。例えばわらび餅にまぶされたきな粉。わらび餅を覆いつくし、まるで一番の目立つ存在の様ではあるが、あくまでも主役はわらび餅。葛きりも同じ。昔懐かしい、餡子玉も同じ。
 ネットできな粉商品を検索しても、それらはほぼ風味付けとして、どこまでいっても引き立て役のきな粉でしかない。
 名は有名で、且つ人々に永く愛されてきた存在にも関わらず、きな粉が主役になることはないのか?
 いや、あった。その名も『きな粉玉』。

 『きな粉玉』は、一個一個大切に紙の包みに収まっている。
 包みを開ける。見た目は、まさに玉。表面に和三盆を纏わせている。いつもならきな粉が務めている役目を、今回は和三盆に譲っている。
 香りを嗅げば――きな粉の、香ばしい強い香りが。これぞ主役の風香。
 一口齧ってみる。歯応えは、粘りけがある。原材料を見ると「水あめ」となるので、水あめを混ぜて固めてあるのか。その為の歯応えか。
 きな粉玉の中にはマカダミアナッツが細かく砕かれ、きな粉と練り上げ固められている。固められたきな粉の食感の中に、マカダミアナッツの硬質な食感がアクセントを付けている。
 風味は・・・きな粉。きな粉のそれ自体が甘味を持っている訳ではないので、菓子として和三盆や砂糖が加えられているが、甘味はあくまでも引き立て役であり、主役は絶対的にきな粉が演じ切っていた。
 派手さはない。ただ堅実に、実に堅実に旨味を覚える。
 慣れ親しんだ風味だ。
 うん、きな粉だ。美味しい。

 『きな粉玉』を製造販売している吉祥菓寮は「煎り大豆」を節分豆として販売した経験から大豆、及びきな粉に精通しているようで、サイトでは大豆を煎る工程を「焙煎」と表現している。個人的に焙煎というとコーヒーをイメージし「大豆を焙煎する」という言葉は真新しく、なにやらお洒落に聞こえるから不思議だ。
 また「当店では主に、「焦がしきな粉」「黒須きな粉」の2種類をお菓子によって使い分けております。焦がしきな粉も黒須きな粉も「京きな粉」と呼ばれ、通常のきな粉よりも強く煎り、色が濃いのが特徴です。香りを重視した京菓子によく使用されることが「京きな粉」と呼ばれる由来です。関東では浅煎りのきな粉が好まれ、深煎りの京きな粉は関西で好まれております。」――吉祥菓寮サイトより
 勉強不足でお恥ずかしいがこちらも初耳であり、さすがに「煎り大豆」の歴史を持つ店舗だけにきな粉に関する豆知識をしっかりと提供してくれている。
 きな粉に対する、造詣の深さと、ちょっとしたお洒落さ。
 その間にこそ、いつも引き立て役のきな粉が主役に昇り得る道筋があったのかもしれない。
 これぞ、きな粉の晴れ姿。
 いざ、お披露目で御座いまする。

 同店別商品:宇治抹茶ミルクジャム/深煎りきな粉ミルクジャム

(2016/06/27)

吉祥菓寮ホームページ⇒http://kisshokaryo.jp/

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