瑞穂のしずく

<瑞穂のしずく>

<店舗名:ベルアメール 京都別邸>
<価格(税込):1512円>

 

 チョコレートとお酒の組み合わせ、というとウイスキーやブランデーを思い浮かべるが、最近では日本酒との組み合わせも注目されているようだ。
 国税庁が公開している『酒リポート』によれば、そもそも日本国内における酒類販売(消費)数量は減少傾向にあり、その中でも清酒(日本酒)の販売(消費)数は近年一貫して減少しており、新たな市場開拓は大きな課題であることが伺える。
 そんな中、外国人観光客増加に伴う日本文化の再発見、再認識が行われる過程において、日本独自のお酒である日本酒についても新たな可能性を模索する中で、チョコレートと組み合わせるアイデアが浮上したのだろう。
 今回紹介するのは、そんなチョコレートと日本酒の組み合わせの中でも、京都で栽培された酒米「祝(いわい)」で作られた、京都を代表する酒蔵の日本酒を使用した、京都ならではの一品。

 ただ、普段から日本酒は嗜まないし、知識もないので、食べて感想を語るのが難しい。
 なので、とりあえず調べた情報を列記してみる。
 そもそも京都で栽培された酒米「祝」は、昭和8年京都府立農業試験場丹後分場で「野条穂」 の純系分離によって生まれ、戦前は奨励品種として生産されていたが、稲の背が高く倒れやすいこと、収量が少ないこともあり、戦後の食糧増産の政策もあって衰退したが、大量消費から質への時代の変化の中で、京都の風土に適した酒米として伏見酒造組合の働きかけによって、府立農業総合研究所などで栽培法を改良し復活させたのだという。

 写真左から、北川本家の「祝」とビターチョコの組み合わせ。北川本家サイトによれば「祝」の特徴は『米の味がしっかりしていて濃厚な味に仕上がるのが祝の特徴』とのこと。
 左から二番目は、招徳酒造の「花洛」とミルクチョコレートの組み合わせ。招徳酒造サイトによれば「花洛」の特徴は『やわらかで、まろやかな独特の風合いを持つ』とのこと。
 真ん中は増田徳兵衛商店の「月の桂」とホワイトチョコの組みあわせ。増田徳兵衛商店サイトによれば「月の桂」の特徴は『燗でもよし、冷でも、また常温でも、冴えた味わいとふっくらとした丸みを持つ』とのこと。
 右から二番目は、都鶴酒造の「都鶴」とビターチョコレートとの組み合わせ。「都鶴」ラベル表記によれば特徴は『京都らしいはんなりした味わい』とのこと。
 一番右は山本本家の「神聖」とミルクチョコレートとの組み合わせ。商品の説明書に表示されている「神聖」と同じラベルを貼った商品をネット上で発見できず、その特徴については不明。

 商品説明書によれば『桝に見立てたショコラの中に、厳選した日本の素材(※日本酒の外にも、国産茶、国産フルーツを使用した商品もある)をジュレにして流し込みました』とのこと。
 桝の底にはそれぞれ異なる模様が描かれ、ジュレとして流し込まれた素材の特徴を美しく表現しているようだ。
 使われている素材が日本酒ということもあり、封を開けた瞬間に独特な強い香りを予想したが、そこまでの強い日本酒の香りはせず、鼻を近づけて意識すると、なるほど日本酒の香りだ、とわかる程度。と同時に、チョコレートの香りも漂う。
 さて、頂く。
 桝と見立てられたチョコレートはしっかりと、ジュレは舌の上に素早く馴染む。
 本来ならそれぞれの特徴をリポートしたいところだが、上記したように違いを語れるような舌も知識も持ってはおらず・・・
 三種のチョコの風味の違いはさすがにわかる。それと組み合わされる日本酒のジュレ。おお、間違いなく日本酒の風味。その風味の中に、なるほど、さっぱりとした酸味を覚える。日本酒の違いは詳細にわからないが、酸味の濃淡はそれぞれにあるようだ。
 日本酒の酸味とチョコレートの甘味がそれぞれの素材の風味の特徴であるならば、酸味の強弱に合わせ、甘味の強弱を考慮し組みあわせているのだろう。

 日本酒からの視点ではなく、あくまでもチョコレート好きの視点から見た場合、一品全体の調和として、ほるほどこういう風味になるものなのだな、と感心する。
 日本酒が極端に駄目だという人でなければ、独特な面白い風味を味わうことができるだろう。
 これはこれで、とても美味しく頂いた。

 では、反対に日本酒好きの視点からみた場合、どのような印象を受けるのだろうか。
 そもそも、日本酒と甘味の組みあわせというイメージ自体がないのでなないだろうか。日本酒のつまみといえば、塩辛いもの。
 チョコレートの視点から見た場合、日本酒も、古くからチョコレートに馴染み深いウイスキーやブランデーと同じ酒類の一種であると考えれば、品種の差こそあれ受け入れるハードルは比較的低いように思われる。
 だが、日本酒の視点から見た場合、組みあわせとして甘味そのものが未知の世界。調和のハードルは高いように思える。
 それでも、その常識を覆したところに、日本酒の新たな市場は開拓されていくだろうし、日本酒の可能性は広がっていくのではないだろうか。もちろん、そこに個人の嗜好の差は生まれて来るだろうが、日本酒全体としては必要な試みとなるのではないだろうか。

 日本酒の新たな試み、形、味わいがここにある。
 商品コンセプトの見立てに従っていうならば、
「お試しに、一杯いかがですか?」
 と、なるだろうか。

(2017/04/06)

ベルアメール 京都別邸ホームページ⇒http://www.belamer-kyoto.jp/index.html

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