<ニッキもち>
<店舗名:名月堂>
<価格:各120円(税込)>
京都のお菓子でニッキを使用したお菓子というと、真っ先に思い浮かぶのは八つ橋ではないだろうか。
その他、ニッキと和菓子の関係を調べてみると、千年前の姿をそのまま伝える菓子の一つといわれる亀屋清永の『清浄歓喜団』の餡に含まれる八種の香料の中に、肉桂(にっき)の名前を見ることができる。
ニッキ=シナモンとの認識が一般的(※明確に分類すると産地や使用部位などで異なるらしい)なので、どちらかというと西洋菓子の香料のイメージがあるが、なるほど和菓子との間にも長い歴史があったのだな、と改めて知る。
ということは、お餅との親和性も確かか。
見た目は正方形に形成されており、一般的な切り餅の様。ところが、ひとたび口に運ぶために指で摘まんでみると、ぐにゃりと形を変える。見た目から想像していた以上に摘み上げる為には指先に力を必要とし、上げたら上げたで摘まんだ部分を中心に左右が力なく垂れ下がる。餅の状態で例えるならば、撞きたての柔らかさに近いだろう。
幸い撞きたてのような熱は持っていないので、猫舌でもすぐに口に運ぶことができる。
一口。うん、実に食感も柔らかい。ふわふわとした感覚に近く、とても多くの空気を含んでいるようだ。口の中で馴染んでくるにつれ、次第にマシュマロの感覚に近くなり、そのまま溶けていく。この、マシュマロに感じる一瞬が、お餅らしからぬ実に独特な食感で特徴的だ。
そして風味は・・・
今回購入したのは、真ん中がニッキ風味。今回の主役。それと左が黒糖。右が抹茶。
それぞれ、実にシンプル。黒糖は黒糖の風味がしっくりとくる程度にあり、抹茶は抹茶の風味がしっくりくる程度にあり、そしてニッキもニッキの風味がしっくりくる程度に味わえる。
おお、この風味の程度の『しっくり具合』を『普通』と感じてしまうのだが、却ってそこに職人による『加減』の技が光っているようにも思える。
お餅との相性もなんら違和感を覚えることなく、至ってしっくりと美味しく頂いた。
ニッキはシナモンに比べて辛味が強く、中には苦手な人もいるようだが、ニッキもちを口に含み感じるのは、食感も含めた丸みの統一感。食感にも風味にも角がなく、軽い弾力を残して滑らかに溶けていく。
融和状態の高いお餅、とでも言おうか。
最近では色々と健康における効能も報告されているニッキ(シナモン)だけに、一時的なお土産というよりも、普段使いの中で楽しみたいと思わせてくれる一品だ。