<浜土産>

<店舗名:亀屋則克>
<価格:380円(税込)>

 

 京都の夏のイメージとして一番に思い浮かべるのは・・・京都盆地を囲む山々の木々の青さではないだろうか。
 一方で、一般的に夏のイメージとなれば山か海、となるのではないだろうか。
 京都で海・・・は遥か北方にあり。そんな地理的条件によって、京都の夏のイメージとして海は結びつかない。京都で水気となると、海ではなく鴨川に代表される『川』がメインになるだろう。夏の風物詩である川床などは、その代表格だ。
 なので、海を感じさせてくれる一品が京都にあることに驚いた。
 それが今回紹介する亀屋則克の『浜土産(はまづと)』。なんと蛤の貝殻を器に使った商品ときた。

 見た目インパクト、最上級。ああ、波音が聴こえるようだ。照り付ける太陽。焼ける砂浜。ヒリヒリする皮膚の感触・・・おっと、イメージが偏ってしまった。
 下手なイメージを膨らませない限り、シンプルに涼感を誘うビジュアル。
 貝が合わさった状態のままでも、とりあえず香りを嗅いでみる。さすがに海水の香りはしないようだ。
 合わさった貝の隙間に爪を差し込み、貝を分けると、鮮やかな琥珀色の寒天が現われる。その中に一点茶色の部分は、浜納豆(国内産大豆、原塩、生姜)を含ませてある。貝の中身もまた、見た目インパクト最上級。
 商品に同封の説明書きに『空いた殻ですくってお召し上がり頂いても面白みがございます』とあったので、従ってみた。
 殻を差し込んでみると、寒天の弾力はしっかりとしている。しっかりとへこんで、一旦崩れるとすんなりと殻が入っていく。
 とりあえず琥珀色の寒天部分のみをすくって口に含んでみる。うん、甘い。砂糖の甘味というよりも、含まれる水飴の、少しねっとりとした甘味を良く感じる。
 では、今度は浜納豆を含めてすくい、口に含んでみた。おっ、これは面白くもあり、美味しくもあり。浜納豆の味噌風味が、というよりも発酵に伴う旨味成分が凝縮したような好ましい旨味を感じ、かつ塩味と琥珀寒天の甘味が混ざり合うと、またまた旨味が増したように感じ、味覚に楽しい。
 この風味、好みだ。

  商品添付の説明書きによれば、
 『――浜土産は、私共の初代が本家亀屋良則に奉公していた大正時代に、そんな海岸からはほど遠い京都において、見るからに海辺のおみやげの如く、真夏でも日持ちするお菓子をと考案したのだと聞かされております』
  ん?ってことは、コンセプトとしては京都のお土産ではなく、海の遠い京都の人への土産として考案されたということか。なるほど、つまりは京都人による京都人の為のお土産ということか。
 だったら、京都土産とするのはおかしいか・・・というと、そういう訳ではない。なぜなら、蛤そのものをお土産とするのではないのだ。『浜土産』は京都の菓子職人によって創作され、高い技術によって作り続けられてきた立派な和菓子なのである。まぎれもなく京都ならではの一品であり、例え海に近しい地域の人々にとっても、良いお土産となるだろう。
 実にアイデア豊かな一品だ。

(2017/08/14)

亀屋則克ホームページ⇒https://www.kameyanorikatsu.com/

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