さしみ湯波

<さしみ湯波>

<店舗名:湯波半老舗>
<価格:1260円>

 

 それはとっても大人な味わい?はたまた、趣のある味わい?
 とにかくも、その戦い?は非常に難しいものだった。

 大体、湯波(※通常は『湯葉』と表記するかと思うが、湯波半老舗では『湯波』と表記しているので、今回はそちらで統一する)というものを管理人は余り口にしたことが無い。それこそ口にするとなると、京都に出てどこかの食事処に行かないと、なかなかお目にかからないように思う。そもそもが湯波は精進料理の材料なのだから、一般家庭の食卓に上がるのは稀なのではないだろうか。
 そして、そんな稀にしかお目に掛からない湯波の印象は・・・いつの間にかに食べてなくなっている、という印象だろうか。特別な食感がある訳でもなく、味が強い訳でもなく。料理は片っ端から片付けていくのが性分の管理人としては、まさにいつの間にかに「片付けてしまっている」存在だ。

 今回は、そんな湯波を主人公にしてみた。
 京都でも老舗の湯波半老舗で湯波そのものの味が味わえるという「さしみ湯波」を買ってみた。
 名前の通り食べ方としては、生湯波を刺身で頂く。購入した袋の中に同封された紙片には食べ方として「土佐醤油で振り柚子でもかけて召し上がって下さい」とあったが、残念ながら我が家にはそんな気の効いた備えはなく、またこの為だけに土佐醤油を用意する出費を惜しみ(惜しむのかい!という突っ込みが聞こえてくるようですが、ご容赦下さいませ)、市販の醤油を用意して、早速頂いてみた。

 2センチ幅ぐらいに切って、醤油を軽く付けて一口。うーん、醤油の味、という第一印象。けれど、舌と上顎で磨り潰すように湯波の層の重なりを解いていくに従い、まさに大豆の風味が口内に広がってきた。うん、なるほど。
 2切れ目は醤油も付けずにそのまま頂く。今度は最初の醤油の味も無いので、口に入れた瞬間は当然のように水っぽい印象だけが残る。ほぐし、味の探索に集中すると、ようやく大豆の風味が漂ってきた。
 正直、管理人にとってしてみれば「美味い!」と強調するような強烈な味わいではない。だが、先にも書いたが、湯波は元々精進料理の材料である。味の主張はとてつもなく控えめだ。
 ここで普段とは別の見方をしてみたいと思う。それは「美味い」「まずい」という好みの優劣ではなく、素材の風味の活用という見方。
 そうした場合、探索に手こずりはするものの、捉えることさえできればそれはとても豊潤である。大豆の味わいを、充分に引き出しているのではないだろうか。大豆を炒ってそのまま食べても美味しいが、湯波が醸すどことなくある味の奥深さには辿り着かない。

 現代の味の濃い食事に慣らされてしまった管理人の舌では、その戦い(=味の探索)は非常に難しいものだった。
 しかし、今回の湯波のように味の主張が大人しい食材こそ「大人な味わい」として楽しむことができるのかもしれない。
 このさしみ湯波には、きっと辛口の日本酒が合うのであろう。けれど、管理人は飲めない・・・
 管理人、齢30。色々な部分で、まだまだお子ちゃまである。

(2008/03/04)

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