竹の子最中

<竹の子最中>

<店舗名:喜久春>
<価格:(1個)150円>

 

 京都市西部から乙訓地域にかけては竹の子の産地として有名で、
『最高級のものは「白子(しろこ)」と呼ばれ、軟らかく、えぐみが少なく、独特の風味と歯ざわりの良さが特徴です。
 「京都式軟化栽培法」と呼ばれる特殊な方法で栽培されます。秋から冬にかけての敷きわら、土入れの作業が重要で、これらを長年続けてきたことにより、やわらかな土壌となって、良質のたけのこが生産されます。
 収穫は、この地方独特の「ホリ」と呼ばれる1m程の専用のくわで、たけのこが地上に出る前に行われます。』
 ~農林水産省/近畿農政局HPより~
 とのこと。
 今年の春には西京区を自転車で回ったが、その際にも様々なところで竹の子が販売されており、思わず小さな個人商店のようなところで衝動買いしてしまったものだ。

 さて、そんな竹の子の名産地ともあってか、今回紹介するのは、まさかの竹の子入り最中。第一印象としては「大丈夫か?」と意外な組み合わせに大きなお世話にも心配してしまったが、ものは試しと購入してみた。
 竹の子とお菓子、そのギャップがどのように縮められ、更には活かされているのだろうか?

 味の種類は3種類。大納言に白小豆、京柚子となっている。
 見た目には、竹の子をイメージした姿となっていて面白い。平面的な丸や四角の最中は良く見るが、全体的に丸みを帯びた姿は珍しい。
 香りをかぐと、うん、これは至って普通の最中と同じ。
 では、早速一口。最初に頂いたのは大納言。
 うん、普通に最中として美味しい。大納言の旨味もしっかりしている。
 でだ、問題は竹の子の存在感。竹の子は餡の中心に、まるで大黒柱の角材のような形で埋まっていた。期待するのは、まずその歯ごたえだが――氷砂糖を利用した甘露煮にしているそうだが――イメージした食感よりは柔らかいだろうか。歯への繊維質な抵抗感は確かにあるが、普段口にする竹の子と較べてしまうと、繊維が簡単に崩れ「シャキ、シャキ」という歯ごたえからは遠いような気がする。
 そして竹の子の風味だが、甘露煮にされている為にだいぶ和らげられており、しっかりと咀嚼していくと「ふわっ」とにじみ出るような感じだ。
 なるほど――
 正直な感想として、竹の子を入れる必要性が、いまいちわからない。普通に最中として美味しいのだが、では竹の子を入れることによってどんなプラスアルファ―があるのかというと・・・いまいちわからない。
 竹の子を入れる利点としては、その独特な歯ごたえを活かすことが重要に思われ、その為には一本の竹の子を入れるよりも、細かくした竹の子を餡全体にまぶした方が、個人的には良いのではないかと思ってしまう。『視覚的な竹の子の存在感』という意味ではこの様な形態の方がいいのは確かだが、一本だと、それを引き抜いてしまったら――後は普通の最中になってしまう(実際、そうなったし。。。)
 竹の子とお菓子、そのギャップは見事に縮められたと思われるが、活かすという意味では少々物足りなさを感じた。
 もちろん、創作の過程で試行錯誤の結果こうなったのだろうし、その努力をしていない人間が口を挟む問題でもないのだが、いち消費者の嗜好として以上のような感想を抱いてしまった。
 なお、大納言以外の白小豆、京柚子も普通の最中として美味しかった。

 喜久春の『竹の子最中』は、地域の名産である竹の子を使ったお菓子作りを志し、創作されたであろう挑戦的菓子である。
 なので、他ではめったにお目に掛かれない、希少価値という意味では実に面白い一品だ。
 当地を訪れ、当地のお土産とするならば、きっと喜ばれる一品となるだろう。

(2013/07/01)

喜久春ホームページ⇒http://kikuharu.com/

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