<にほひ袋>
<店舗名:石黒香舗>
<価格:2100円(写真上部の香りキーホルダー)>
そもそも今の時代、におい袋の実用性などないだろう。臭い消しなら、消臭スプレーを。香りを漂わせたかったら、香水を用いればいい。果ては、なんでも噛むだけで体臭自体に香りを付けられるガムまであるのだとか。その効果の為に、わざわざかさばる、におい袋を持ち歩くなんてナンセンスな話だ。
けれども――その店舗に入るや、わくわくしてしまうこの気持ちはなんだろうか。
今回紹介するのは、日本で唯一の「にほひ袋専門店」だという、石黒香舗のにほひ袋。
こじんまりとした店内に入ると、色とりどり、そして様々な形状のにほい袋が飾られていた。
ストラップになるような小さなものから、室内の飾り物として存在感を示せそうな、袋というよりは置物まで。
店内の奥では、お店の人がにほひ袋を作成する工程を実演していた。
さぁ、このわくわくする正体はなんだろうか。
一般的な嗜好として考えれば、例えば平安貴族への憧れか。そもそもにおい袋は、貴族社会で発展したものだ。要はその真似事の一つとして、にほひ袋を一つなりとも持ち歩くのは、欲求を満たす手助けになるだろう。しかし、管理人はあまり貴族社会に対する憧れは抱いていないので、どうも違う。
次に、単純に見た目の華やかさ。もしくは、デザイン。そう、デザイン、これがなかなかぷりちぃーなものが揃っていて目移りしてしまう。三十路を過ぎた男が何を言っているのかと言われそうだが、嫌いではないのだな、これが。同じデザインでも、配色が異なるものが幾つもあるので、選択の幅が広がり、返って迷いの種に。その迷いが、また楽しみの種であり、単純にわくわく度の6~7割は、これに起因すると思われる。しかしだ、まだ足りない。袋のデザインだけならば、なにもにほひ袋に拘る必要はない。
そう、やはり香るということが重要なのだ。そして、非実用的であるという点が、実は重要な意味を持っていると思われる。
最初に挙げたが、香水などを利用する方が、好みの場所に、手軽に香りを付けられるのだから、なんと実用的だろう。自然、にほひ袋は香り付けの舞台から淘汰されていった。現に、管理人もこれまでにほひ袋を常用している人など周りに誰もいなかった。けれどもその為に、長い歴史を持つにほひ袋だが、実は管理人にとってはとても新鮮で真新しいものに感じられたりするのだ。これは管理人ばかりではなく、一定の世代以降の人々が感じている実感ではないだろうか。鮮やかなデザイン性の上に、しかも香る!香るストラップや、キーホルダーって珍しくないか?
本質である一義的な「香る」という舞台では香水などに太刀打ちできないだろうが、ストラップや、キーホルダーのにほひ袋を代表格として、二義的な「香る」という舞台においては、今、にほひ袋はとても新しいのではないだろうか。その新しさにこそ、管理人がわくわくしてしまう残りの要因があるように思う。
さて、散々「非実用的」とにほひ袋を罵る様なことを書いてきてしまったが、なんでも石黒香舗のにほひ袋の香りは、防虫効果があるのだとか。
デザイン性の上に香って、しかも防虫効果もあるなんて、にほひ袋はなんて実用的なんだ!!
古くて新しいにほひ袋。何気なく鞄に付けるのも、新しいスタイルの一つかも。鞄の中に入れておけば防虫にもなるし。。。