御香煎・黒七味

<御香煎・黒七味>

<店舗名:原了郭>
<価格(税込):御香煎324円/黒七味378円>

 

 『原了郭の創業は元禄16年(1703)年。初代の原儀左衛門道喜は、赤穂義士四十七士の一人である原惣右衛門元辰の一子で、剃髪して「了郭」と称し、祇園社門前に店を開きました――』
 ――原了郭パンフレットより。
 赤穂義士の原惣右衛門!思わぬところで薄っすらとも知った名を見出して驚いた。

 そんな原了郭を代表する2品を紹介。
 写真左が御香煎で、写真右が黒七味。

 まず、香煎とはなんぞや?と調べてみると、
 『穀類などを炒った香ばしい粉。湯・茶を注いで飲む。麦こがし』――三省堂国語辞典より
 との事。なるほど、つまりは煎って香りを出したもの(楽しむもの)ということか。それを原了郭では、
 『茴香(ウイキョウ)、陳皮(チンピ)といった漢方薬の原料を数種類合わせて香ばしく煎り、粉末状にして焼き塩で味付けしたもの』――原了郭パンフレットより。
 だそうだ。
 封を開ける。おお、香りは、薬草の感じ。なんとも独特な香りで表現が難しい。嫌な香りではなく、嗅いでいる内に癖になりそう。
 塩が混ざっているので、見た目は付け塩のような感じ。なので、肉料理に合わせてみたらどうなるのかな?と出来心。
 そのまま舐めてみた。塩味が強いが、それだけではない薬味がする。苦々しくはない。体に良さそう、と思ってしまうような風味。
 では、お湯を注いでみた。
 例の薬臭が湯気に混ざって立ち昇る。
 基本はやはり塩味となるが、薬味もしっかりと口内に広がっていく。清涼感・・・というのだろうか、やはり体に良いものを頂いた気分になる。
 ちなみに、茴香や陳皮は漢方では芳香性健胃として用いられるようなので、一服し心理的にほっとするだけではなく、胃の働きの助けとなってくれそうだ。

 次に黒七味。
 通常七味といえば赤いイメージを持つが、その名が示す通りに原了郭の七味は見た目から独特だ。
 『原料は白ごま、唐辛子、山椒、青のり、けしの実、黒ごま、おの実。材料をから煎りし、唐辛子や山椒の色が隠れるまで手で揉み込むことによって独特の濃い茶色となり、これが黒七味と称するゆえん』――原了郭パンフレットより。
 なるほど。確かに黒く見える。
 封を開けてみると、山椒・ゴマの香りが強いか。不思議な香り。本当に独特な香り。
 そのまま、ほんのちょっとを舌先に乗せてみた。最初、山椒やゴマの風味がふわっと広がったが、次の瞬間には強い辛味が舌を刺激した。結構、ひりひりと残る。
 野菜スープに入れてみた。ベースはコンソメ味。
 香りは例の独特の香りが漂う。コンソメとの相性・・・しまった、黒七味を入れ過ぎたか。完全に黒七味が勝ってしまっている。
 それでも、おかしな味になってしまっているということはない。ぴりりとした風味が食欲をそそる。
 その他にも原了郭パンフレットでは、
 『麺類、鍋物、お漬物、お味噌汁、ムニエルやフライ、麻婆豆腐、焼きそば、焼肉、すき焼き、トマトソースなど』
 での使用をお勧めしているようだ。
 ちなみに、友人はシチューで試してみたそうだ。味が引き締まるとのこと。

 ところで、最初に戻るが、原惣右衛門と原了郭の初代といわれる原儀左衛門道喜の関係を調べようとしたところ、どうも原儀左衛門道喜の名は原了郭関連のサイトでしか確認ができない。
 それで今度は原惣右衛門で検索し『元禄赤穂事件の一部始終』というサイトを見付けて原惣右衛門のページを確認したのだが、原惣右衛門には最初の妻との間に2人の男子をもうけているが、一人は早世し、もう一人は女子との双子であった為に里子に出され出家したとのこと。
 その他には後妻との間に1人の男子をもうけて、この子が後に原惣八郎と名乗り安芸の浅野本家に仕えているのだが・・・討ち入りがあった元禄15(1702)年当時、この一子は5歳だったというから、原了郭の創業が1703年というので一致しない。
 原惣右衛門に上記した3人の男子以外に実子はなく、では原了郭の初代といわれる原儀左衛門道喜とは誰だ?となるが、どうやら原惣右衛門には養子があったようで、原兵太夫というその養子は上記したサイトでは『実子ができたのを気兼ねして逐電し後不明』と説明されている。
 もし「原兵太夫」=「原儀左衛門道喜」であったとするならば、逐電したその一事で人生をおもんばかるのは安易ではあるが、そこには大きな苦労が伴ったのではないだろうか。
 『一子相伝で伝わった技法はやがて、薬味を昇華させた』――原了郭パンフレットより。
 もし上記した仮設が成り立つのだとしたら「一子相伝」という言葉にも、原儀左衛門道喜の人生の深みを感じるようにも思える。
 深き人生が辿り着かせた風味。
 今回紹介した2品の風味には、そんな趣があるのかもしれない。

(2015/04/05)

原了郭ホームページ⇒http://www.hararyoukaku.co.jp/

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