和菓子作り体験

「和菓子作り体験」

 

 和菓子は季節と共にある。
 和菓子で季節を表現する為の技巧は、精妙である。
 まさに、職人のなせる業である。

 自分、不器用なんで。。。
 そんな自分に、和菓子作りなんて・・・
 とも思うが――まぁ、やるだけやってみよう。
 どうせ出来上がったものは自分が食べるんだ。誰に迷惑をかけるでもなし。。。

 訪れたのは甘春堂。
 到着すると、早速エプロンを渡され、準備に取り掛かる。
 二階の作業場の入り口で、念入りに手を洗う。
 指示されるままに所定の席に着くと、諸道具が用意され『本日の課題と種類』と題されたお菓子の写真入り説明書が置かれていた。
 ご指導頂く職人さんが一つ一つ説明してくださる。
 作るお菓子は4つ。
 ①干菓子 きざと『楓』(写真皿上の3枚の青紅葉)
 ②上生菓子 ういろ『水温む』(写真上部左)
 ③上生菓子 練り切り『音羽の風』(写真上部右)
 ④上生菓子 きんとん『爛漫』(写真皿上中央)

 まずは『①きざと』から。
 『きざととは元禄・享保時代に始まり、献上菓子から生まれ、京都で発達したお菓子です。きざとは「生砂糖」と書き、字のごとく生地のほとんどが砂糖で、つなぎに寒梅粉(餅粉を加工した粉)を用います。その混合粉に少量の水を入れて、耳たぶぐらいの硬さになるまで揉みます。その後、好きな形に加工していきます』――上述の説明書より
 各自に黄色と緑色のきざとが配られる。それらを重ね合わせ、グラデーションを作るように伸ばし、更にめん棒を使って平たくしていく。その上で金型を押し当て、紅葉の形に抜いていく。
 若干加減がわからずにのばし過ぎて薄っぺらになり過ぎた嫌いはあるが・・・なーんだ、簡単じゃないか。ちょっと心に余裕が生まれた。

 次は『②ういろ』
 『ういろは、ういろう(外郎)と同じで、中国から伝わり、当初は薬として用いられていました。ういろ生地は、砂糖・上用粉・餅粉等を水で混ぜ合わせて、その生地を蒸しあげて作ります。蒸し上がった生地のあら熱を取り、冷やして、人肌になってから加工し餡を包みます』――上述の説明書より
 各自に白と緑の玉にした外郎が配られる。水気の多いねっとりとした生地。
 まず白生地を両手の平で潰すように伸ばし、緑の玉も伸ばして重ねる。掌に伸ばしきったら、そこに白餡を乗せ生地で包み込む。左手の平を上手くつぼませ、右手の指さきで生地を閉じていく。意外と順調に包餡し、円柱形に形を整える。そしたら、上を向いた円の面に金型を押しつけて波紋を描く。最後に桜の一片を乗せて完成。
 手際で戸惑うところもなく、完成した姿もなかなかいいんじゃないでしょうか。なんか調子でてきちゃったかな。

 次は『③練り切り』
 『錬り切りは餡に餅粉のつなぎを入れて炊き、粘りけを出した庵です。上生菓子で最も利用される生地で、細工する餡を言います。練り切りの整形に木型に入れて形をつける場合もありますが、当店では布巾で絞ったり、ヘラで整形したり、昔ながらの方法でいたします』――上述の説明書より
 緑と黄色の玉が配られる。ういろと時と同じように、まずベースになる緑の練り切りを平たく伸ばし、今度は黄色の玉を軽く伸ばしたら、緑の生地の一方に偏らせて重ね、グラデーションを作るように緑の生地に馴らしていく。そこに赤餡を乗せ、包餡する。
 円柱形に包餡したら、今度は紅葉をイメージする整形の為に六角形にし、指で摘まんで角を尖らせる。
 角の根元辺りに一個所目印をつけてから、その目印に向けて各辺からヘラを使って筋を入れていく。これで紅葉の形を整形し、更に各角から目印に向けてヘラで筋を入れることによって葉脈を表現する。
 最後に、目印をつけた角を曲げて葉の茎を表現し完成。
 ・・・不器用者にとっては一気に難しくなった。見事に不細工。紅葉に・・・見えないこともなさそうだが・・・不細工だ。
 芽生えた自信はあっという間に砕かれた。ああ、儚い。。。

 最後は『④きんとん』
 『きんとんは「金団」とも書き、上生菓子には欠かせないお菓子です。きんとん用の餡を藤製のきんとん用の裏ごしで通し、餡をそぼろ状にします。そのそぼろを餡玉の周りにお箸で丁寧に付けていきます』――上述の説明書より
 きんとん用の二色の餡と、土台になる餡玉が配られる。裏ごし用の通し(目の細かいざる)の上にきんとん用の餡を乗せ、一気に掌の付け根で押し込む。この際、力任せにやったせいか、捻り出たものは、そぼろ状、というにはやたらと長いものができてしまった。力加減・・・
 捻り出されたきんとんの山の周囲に散らばる滓を、餡玉をお箸で挟んで軽く叩くように付着させ底を作る。それから餡玉の周りにお箸できんとんを付けていく。まず回りをぐるりと。それから天頂部分を。丁寧に。丁寧に。中の餡が見えなくなるように。
 うーん、やはりきんとんの一片一片が長すぎて不細工だわ。大雑把。精妙さがない。。。

 出来上がった4品を見てみる。
 『きざと』と『ういろ』に関しては素人目にはそれなりの出来上がりに見えるが、『錬り切り』『きんとん』に至っては、素人目にも不細工だ。
 実践してみて、職人さんの技術の素晴らしさを知る、ってことで。

 甘春堂では、その場でお抹茶を提供し、制作した4品の中からきんとんを食べてみよう、というシステム。
 頂く。きんとんの口に入れた食感の善し悪しとか基準はいまいちわからないが、きっと大雑把なのだろう。けれど、整形以外の素材そのものは職人さんが作ったものなので、味は間違いなく美味しかった。
 残りの3品は、お店側が用意してくれた小箱に入れてお持ち帰りとなる。

 今までは食べる専門だった和菓子の世界。
 こうして作り手の体験をしてみて感じたことは・・・自分で作ってみるということは面白い。実に面白いが・・・うん、やはり食べる専門だな、と確信を抱くに至った。
 職人の皆様方、今後とも美味しい和菓子をお願い致します。

(2016/05/05)

甘春堂ホームページ⇒http://www.kanshundo.co.jp

京都にてのあれこれへ トップページへ