「2016紅葉見物」

 

 ここ数年、残暑の長引きに紅葉の遅れが多かったが、今年は酷暑が続き残暑も続いたが、一時期を境に秋らしい過ごし易い陽気に落ち着き、寒さもじっくりとやってきてくれたお陰で、どうやら「例年通り」と言われる過去の統計に沿ったタイミングでの色付きとなってくれたようだ。
 お陰で計画も立てやすく、色付きを見計らって紅葉見物に訪れることができた。

 11月某日。晴れ。

 

東福寺

 まず訪れたのは東福寺。
 東福寺の紅葉には、以前訪れたことがあったのだが、おそらく日曜日に訪れたのだろう、とてつもない人の多さに辟易した記憶がある。なので以降、もうお腹一杯と訪れることはなかったのだが、今回改めて訪れてみた。
 着いて早々、やっぱり凄い人、と思ったが、幸い平日の為か記憶にある人だかりと比べてみるとだいぶ少ないように思え、歩く流れもスムーズに進んだ。
 途中、通天橋を眺められる木製の橋にかかると「橋の上では写真禁止」の看板が掛かり、誘導員も写真禁止を告げるが・・・皆様立ち止まり、撮影しまくってるし。考えてみれば看板は日本語表記のみで、誘導員も日本語での注意ばかり。これだけ海外からの訪日観光客が増えてる中で、そのやり方では伝わらないよな、と思ってしまう。ましてや橋の上から通天橋を望むロケーションは、順路序盤の一番の紅葉の見所であり、写真に収めたくなるのも当然の心理。比較的順調に人が流れていたということもあり、誘導員も黙認していたのかもしれないが、ルールを決めたなら、決めたなりの規制を行わないと不平等となってしまう部分も懸念される。
 とりあえず日本人なので規制を理解できてしまった以上、無視できないので遵守し、写真を我慢して橋を通過した。

 入園料を支払い、通天橋庭園へと入る。
 入ると「ああ、やはり見事だなぁ」と思える景色が広がっている。時期としても丁度見頃と言ってよいかもしれない。緑から、黄色、橙色、紅色、と色鮮やかな色彩が庭園を埋め尽くしていた。
 順路としては、南から北へと向かい、渓谷を下るように階段を下る。そこからは通天橋を見上げる形となり、まさに紅雲の上に架かる通天橋といった風情となる。
 渓谷の底の川を渡り、北側の階段を上がる。
 帰り。通天橋を北から南へと渡る。ここでも上記した橋の上での状況と同じような光景が繰り返されていたが、くどくなるので割愛。
 通天橋からの眺めは、さすがに名所といわれるだけのことはある。下から通天橋を見上げた時と正反対の、今度は眼下に紅雲が広がり、上から見渡す情景は実に壮観だ。
 説明、解釈不要の、純粋な感嘆を覚える。

東福寺ホームページ⇒http://www.tofukuji.jp/

 

泉涌寺

 次に訪れたのは泉涌寺。
 東福寺を離れると、一気に喧騒は薄れ、泉涌寺に人はまばらだった。
 境内に入ると、紅葉した木の姿はほとんどない。仏殿、舎利殿の右手に僅かと、月輪陵の入口右手に、これは大きな樹木が色付いた葉を大きく膨らませていた。

 泉涌寺での紅葉の見所は、御座所庭園となる。東山を借景とした庭園に、配された木々が色彩豊かに色付いていた。
 平日とはいえ、紅葉シーズンにも関わらず人の姿は境内同様まばらで、縁台に腰をおろし、静かにゆっくりと紅葉を楽しむことができるのが、ここの利点のようだ。

泉涌寺ホームページ⇒http://www.mitera.org/

 

泉涌寺(善能寺)

 泉涌寺を北側から出て近くの階段を下りると、左手に善能寺がある。こちらは泉涌寺の塔頭の一つとのこと。
 奥にある祥空殿と呼ばれる建物の右手から、右手手前にある稲荷神社(説明版によれば、日本最初の稲荷大明神を祀っているとのこと)の方まで黄色を主体とした紅葉を見ることができた。

泉涌寺ホームページ⇒http://www.mitera.org/

 

泉涌寺(来迎院)

 善能寺の向かい側にあるのが、こちらも塔頭の来迎院。
 来迎院といえば忠臣蔵の大石内蔵助こと大石良雄が建立した茶室「含翠軒(がんすいけん)」が有名だが、今回はあくまでも紅葉見物。
 本堂の左手に数本の、こちらは鮮やかに紅く色付いた紅葉を見ることができた。

泉涌寺ホームページ⇒http://www.mitera.org/

 

今熊野観音寺

 来迎院の北側にあるのがこちらも泉涌寺塔頭の今熊野観音寺。
 入ってすぐ左に鉄筋コンクリートの舞台造りを思わせる建物があり(舞台上の建物は茶所(休憩所))、その周辺を紅葉が取り囲んでいる。
 正面の階段を登り、左折すると子護大師と呼ばれる大師像があり、その裏手は黄色が多めの鮮やかな紅葉。
 更に本堂前に出ると、本堂右手にある大師堂は緑、黄、橙、紅のグラデーションに彩られていた。その左手奥に朱が鮮やかな医聖堂が窺え、紅葉と朱の鮮やかさを競っているかのようだった。

 泉涌寺、及び三つの塔頭を回ったが、泉涌寺山内では今熊野観音寺が紅葉に関しては、紅葉した樹木の多さからも一番見応えがあった。境内各所で紅葉を見ることができた印象だ。

今熊野観音寺ホームページ⇒http://www.kannon.jp/

 

新熊野神社

 泉涌寺山内を出て、東大路通を北へと向かう。
 途中、新熊野神社があったので立ち寄ってみた。
 今熊野神社といえば大樟が有名だが、紅葉は境内の一角に枝の細い木々が僅かに色付いているばかりだった。
 ここは紅葉よりも、やはり緑色が印象的な境内だ。

新熊野神社ホームページ⇒http://imakumanojinja.or.jp/

 

智積院

 更に東大路通を北上し、智積院へ。
 当初、智積院と紅葉が結びついておらず、たまたま覗いたら、おっ、紅葉しているじゃないか、と入ってみた。
 そういえば、智積院といえば長谷川等伯が描いた国宝の障壁画『桜図』『楓図』があるところじゃないか、と思い至る。

 智積院会館の左手、金堂右手の整備された庭園の木々が鮮やかに色付いていた。
 白石の整備された石畳の通路が、いかにも人工物を思わせ野趣を損なってはいるが、これはこれで他にはない整然とした、計算尽くのシンプルな趣があり、美しさにむらの少ない光景が広がっていた。写真を撮るにしても、失敗が少なさそうで安心だ。

智積院ホームページ⇒http://www.chisan.or.jp/

 

新日吉神社

 智積院を出て、智積院の北側を今度は東に向かう。
 京都女子中学校・高等学校、京都女子大学がある為に付けられたといわれる、通称「女坂」。
 その途中、丁度京都女子中学校・高等学校と京都女子大学の間の右手にあるのが新日吉神社。
 紅葉はあるかな?と境内を歩いてみると、本殿の右手に一本、紅く染まった木があり、更に奥に歩くと、境内社の豊国神社に覆いかぶさるように紅葉した葉が繁っていた。
 なんでも、この豊国神社は豊臣秀吉を祀る社であり、徳川時代には「樹下社」(このもとのやしろ)と呼ばれ、幕府の監視をかわしていたと伝わるという。まさに、この葉の繁りはその名残の様だ。

新日吉神社ホームページ⇒http://www.imahie.com/

 

豊国廟

 女坂を登りきり、更に阿弥陀ヶ峯にある豊国廟へ。
 豊臣秀吉を供養する五輪塔まで、階段を489段ひたすら登って行く。くっそ、しんどいぞ!

 辿り着いた豊国廟は、標高が高いせいもあり、すでに色付きを超えて枯葉になっている木々がほとんどだった。
 労力の割に収穫なし。・・・残念だ。。。

京都にての地図(googleマップ)

 

妙法院

 女坂を下り、再び東大路を北上する。
 すぐの所にある妙法院を覗いてみたら・・・紅葉、あるじゃないですか。玄関横の木が見頃を迎えていた。
 それに釣られて境内を更に入ってみる。玄関の南側に庭園があり、庭園の南側に数本の紅葉した木を見ることができ、更に庭園を進んだ本堂(普賢堂)前にも、見頃を迎えた一本を見ることができた。
 ひっそりとした紅葉、といった感だろうか。

京都にての地図(googleマップ)

 

大谷本廟

 最後に、更に東大路を北上して大谷本廟前に差し掛かったら、滝のように色付いた紅葉があったので一枚。
 こういう流れのある色付きも、趣のある一幅となる。

大谷本廟ホームページ⇒http://otani-hombyo.hongwanji.or.jp/

 

 今年の紅葉見物は時期が合い、また天候にも恵まれて非常に見応えを得ることができた。
 中でも、東福寺は紅葉の名所として有名であるばかりか、通天橋という特殊なロケーションもあり、やはり一番見応えがあり、壮観を覚えたという点で群を抜いているだろう。
 という訳で、毎年恒例の勝手にランキングの今年の一位は東福寺。これは動かしようがない。後はいかに、極力混雑を避けるかに注意するだけでよい。
 二位は、今熊野観音寺だろうか。境内各所に紅葉を見ることができ、また人の訪れもそれほどではなかったので、見物して満足感を得るという意味では非常に良かったように思える。
 最後に三位は、智積院だろうか。個人的に智積院の評価は、紅葉見物の醍醐味を日常寄りに置くか、非日常に置くかによって分かれるのではないだろうかと思われる。なぜなら智積院の紅葉は整備が行き届いているが故に、若干日常に寄り過ぎているような気がする。神社仏閣なら、多かれ少なかれ手入れをしているのだろうが、智積院の整備はしっかりとしている。なので、非日常の風景を望む視点で見た場合、余りにも整いすぎている嫌いを覚え、その点が魅力にもなり、欠点にもなってしまうだろうのではないだろうか。ただ、美しい彩りをみせてくれるということに変わりはないので、三位に選出。

 それにしても、今回は東福寺から東山を五条まで北上したのだが、予定していなかった智積院や妙法院でも紅葉を楽しむことができ、更に北上しても紅葉の名所が続く訳で、まさに東山の東北ラインは紅葉見物の鉄板エリアですな、と今更ながらに痛感する一日となった。

(2016/11/24)

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