「2010紅葉見物」

 

 11月某日。晴れ、時々曇。
 しかし、今年の夏は記録的な猛暑だったようで。個人的にはクーラーの効いた環境にいたのであまり実感はなかったのだが、野菜の高騰などをみるとやはりその影響は大きかったのだろう。
 暑さは10月まで続き、そして突然寒くなった。なんだか秋をすっ飛ばして冬を迎えたか?と思える日もあったが、急激な温度低下は紅葉の色付きの鮮やかさを増す効果があるらしく、今年は特別美しい紅葉が見られるだろうということだった。
 前評判の良さ、京都、日曜日。晴れ。う~ん、人、人、人。
 バスに乗る気にもなれず、ひたすら歩く。歩く。

 

南禅寺

 まず訪れたのは南禅寺。人、人、車、車、人。
 人の流れに身を任せつつ、中門を潜ると紅葉した木々が立ち並んでいた。なるほど綺麗に色付いている。陽射しが差し込むことによって、更に鮮やかさが増す。
 三門前の紅葉もまた色付いていた。三門に登る多くの人々。さぞかしそこからの景色は「絶景かぁ~なぁ、絶景かな?」
 三門と法堂との間の木々も、もちろん色付き、紅葉を目的に訪れた人々にとっては満足に足る光景と思えた。
 法堂辺りから今度は水路閣の方に向かう。この辺りには枝の細い二本の木が少し離れて立っているのだが、この二本の木の色付きは見事に鮮やかだ。実は以前もこの二本の木は見たことがあり、その時も鮮やかだなぁと思ったのだが、今年もまた見事だった。そしてなによりいいのが写真写りがいい鮮やかさで、背景に水路閣を入れた姿がまたいい。細い枝ぶりなので豪快さというものはないが、絶好の記念撮影ポイントではないだろうか。

南禅寺ホームページ⇒http://nanzenji.com/

 

永観堂

 南禅寺を抜けて北へと向かう。それにしても、その道がまた大変な混み様。これには車は歩行者に合わせてスピードを落とさざるを得なく、早歩きの管理人はタクシーを追い抜いてさっさと先を急いだ。
 この道は、どこへ続き道ぞ。永観堂へ続く道ぞ。
 永観堂といえば京都においても紅葉の名所中の名所だ。そこを訪れようとする人々、そこを訪れた後に南禅寺に向かう人々。行くも戻るも人の波。
 永観堂の総門前に立つ。さすがの光景が目前に広がった。参道を見事な紅葉が延びていた。
 中門に近付くと、拝観料を支払い境内に入ろうとする人の列。・・・さぞや臥龍廊からの眺めはいいのだろうけれども、先を急ぐので今回は諦めた。諦めた代わりに参道から永観堂の庭を眺めることができたので、そこからの眺望で我慢。それでも陽射しの差し込む鮮やかな光景を満喫した。下手に人に揉まれるよりはこちらの方がいいだろうという自分をなっとくさせつつ永観堂を後にした。

永観堂ホームページ⇒http://www.kyoto-ebisu.jp/

 

哲学の道

 永観堂の門前の道を更に北上する。人と列もまた続いていた。人の列を辿っていくと哲学の道に出た。哲学の道というと桜という印象が強いのだが、紅葉の頃にも多くの人が訪れる。
 川面に映る鮮やかな赤、といった理想的な光景には出会えなかったが、色付いた木々が点々とし、その点々とした場所では人々がカメラを構え撮影に熱中していた。まぁ、人が多すぎてとても哲学どころではなかったが。

 

大豊神社

 哲学の道の途中、右手に曲がって大豊神社に向かってみた。大豊神社といえば狛犬ならぬ、狛鼠や狛猿、狛鳶が社殿の左右を固めていることでも有名だ。
 境内はこんな日でも静けさの中にあった。人の姿はちらほら見えるが、先程までの雑踏と比べると極めて静謐な空間といえた。紅葉している木は一本あるばかりで時期もあろうが名所とはいい難いかもしれないが、一休みという意味ではとても有難い。深呼吸を一つ。

 京都にての地図(googleマップ)

 

真如堂

 大豊神社を後にして、そのまま哲学の道を横切り今度は西へ。白川通に出たら、今度は北へ。また西へ。辿り着いたのは真如堂こと真正極楽寺。東門から入ったので本堂の裏手に出た。ここもまた紅葉の名所だけあった多くの人の姿があった。それども南禅寺や永観堂に比べたらまだマシか。
 本堂の周囲の紅葉を愛でながら本堂正面へと回る。すると、本堂左手にある楓が尋常では色付きをもって燃えていた。燃えるような、という比喩はこのような色付きに使うのだろうと確信を抱くほどに。間違いなく今年の紅葉見物一の見応えある紅葉だった。あからさまなる紅葉。
 一度参道の階段を下り、見上げる景色も楽しむ。さすがに名所と呼ばれるだけあって、本堂への参道は紅葉に包まれていた。

真如堂ホームページ⇒http://shin-nyo-do.jp/

 

金戒光明寺

 本堂の右手の道を戻り、今度は南への道をとって黒谷の墓地を抜けていく。途中、会津藩殉難者墓地があり、おお、と感心。目指すは金戒光明寺。幕末、京都守護職に就任した松平容保率いる会津藩が本陣を置いたところとして有名だ。
 広大な墓地の間をなんとな~くな感覚で歩きぬくと、ようやく本堂の姿が見えてきた。境内は開けているせいか酷くシンプルな印象で、紅葉の鮮やかさも余り見当たらなかった。僅かに山門の裏手の木々が紅葉しており、訪れた甲斐、を僅かばかり慰めてくれた。

金戒光明寺ホームページ⇒http://www.kurodani.jp/

 

 その後、東天王社こと岡崎神社にも寄ってみたが、残念ながら期待した色付きはなかった。

 以上が2010紅葉見物。
 それにしても曜日、天気からして覚悟の上だったが、やはり相当な人出だった。特に南禅寺、永観堂ラインは紅葉の名所として間違いがなので人気も高いのだろう。南禅寺といえば湯豆腐という印象も強いので、見て、食べて楽しめる優れた観光場所と言えるだろう。
 独断と偏見で今回の紅葉ランキングをつけるとするならば、1位2位は上記の永観堂、南禅寺の順。永観堂はちゃんと境内に入ったわけではないが、充分その絶景は想像できるので1位。3位には真如堂。続いて哲学の道。大豊神社に金戒光明寺といったところだろうか。
 全体としての今年の色付きは、言うほど例年以上の鮮やかさという印象はなかった。時期がもしかしたら合っていなかったのかもしれないが、まぁ、例年通りの美しい景色を見せて貰った。後はこれで人がいなければ!と毎年思い、それは皆様思っていること。
 さて、これで今年も冬を迎える心構えができたというもので。

(2010/12/02)

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