「2013桜見物(1)」

 

 2013桜見物の舞台は山科区と定めた!
 では、どのように回ろうかと考えた時・・・北から南へ横断するような感じで行けばいいかな。
 4月の平日の某日、出発点となるJR山科駅に降り立った。幸いに天候に恵まれ、いざ!と歩き出す。

 

毘沙門堂

 まずは山科駅から北に向かい、訪れたのは桜の名所として知られる毘沙門堂。この時期に訪れるのは二度目になるが、およそ10年程前の事なので遠い記憶・・・
 毘沙門堂の桜の見どころは、なんといっても宸殿前に集中している。本殿から宸殿へ向かうと、まずソメイヨシノ(写真上部)が訪れた者を迎える。更に宸殿前へと進むと、毘沙門堂の桜の見どころであるシダレザクラ(写真下部)が、高さはそれほどないが、左右に長く枝を伸ばして華やかな姿を見せていた。

 さて、こういう名所で写真を撮るのに人影が写りこまないようにすることは非常に難しい。この日は平日で、比較的早い時間に訪れたにも関わらず、ひっきりなしに人々が行きかう。その中で人影を避けようとすると、どうしてもアングルを上部へ向けるしかなくなるのだが・・・ちょっと根気よく待ってみた。短気を堪えて、珍しく待ってみた。そしたら奇跡の時間が!その瞬間を逃さずシャッターを切る。やった!まるで誰もいない境内で撮影したかのような一枚に成功!(写真下部)
 短気は損気。急がば回れですな(特に深い意味なし)

 宸殿前の他にも、桜はポツリポツリとあるが、やはり毘沙門堂では宸殿前に注目ということで。

毘沙門堂ホームページ⇒http://www.bishamon.or.jp/

 

 毘沙門堂を訪れた後に山科聖天こと双林院を訪れたが、こちらに桜の姿はなかったので、今回は割愛。

 

琵琶湖疏水

 琵琶湖疏水沿いの桜と言えば、左京区にある哲学の道や、平安神宮周辺が有名だが、この山科区を流れる疏水沿いもまた、桜が見事に咲き誇っていた。
 琵琶湖疏水と桜。どうも、この二つには強い繋がりがあるようだ。

 

 疏水沿いに南下し、途中で目的の諸羽神社へ。こちらも桜の姿はなかったので割愛。

 

元慶寺

 諸羽神社を出たら、今度は西へと進路を通る。JR山科駅の前を通り過ぎ、更に西へ。
 訪れたのは元慶寺。早速門前右に満開の桜が迎えてくれた。
 それほど広くはない境内に、他にも桜の木はあったのだが、こちらは種類が違うようで、すでに花びらを散らしていた。
 住職と思われる方が気さくに声を掛けて下さって「(事務所の)後ろに回れば、綺麗な桜が見れますよ」と教えて下さったので、ありがたく境内から後ろに回ろうとしたら・・・あれ、この先立ち入り禁止になっている。ので、改めてお話を伺ってみると、どうも境内から出て外側の道路を回り込んだら見えるとのこと。
 回り込んでみた。確かに、塀越しに見事な桜を望むことができた。しかし、なんだろう、このしっくりこない感覚は。いや、わかっている。塀越しに眺める桜に、物足りなさを感じているのだ。桜は桜。どこで花を咲かせていようと、それをどこから眺めようと美しい。けれど『京都の桜』という一視点からの価値観の中では、それが寺社の境内にあるのか、そして境内からの眺めであるのか、によって大きく付加価値が変わってきてしまうのではないだろうか。『京都の桜』紹介する立場からすると、果たしてその光景を『元慶寺の桜』として紹介できるだろうか、という想いが、その『塀越しの桜』の価値の減退に繋がり、つまりは紹介する立場として「しっくり」こなかったのだ。

 『京都の桜』を語るには、制約が多くて大変だ。

京都にての地図(googleマップ)

 

花山稲荷神社

 元慶寺を出て、一気に南下して次に訪れたのは花山稲荷神社。
 写真上部は北側の参道の様子だが、鳥居までの50メートルほどが桜のトンネルのようになっていて見応えがあった。これでは、さぞや本殿も桜に包まれているのだろうと期待したのだが、本殿前には数本の桜のみ。一本、咲いていたら綺麗だろうと思われるシダレザクラがあったが、時期が過ぎていたようで、すでに花を散らせた後だったのは残念だ。
 一方、東側の参道も、道が幅広な分、北側のような『桜のトンネル』と表現できるような密度をもって並んでいる訳ではないが、本殿周囲よりも多くの桜が華やかに参道を飾っていた。
 花山稲荷神社は、本殿周辺よりも参道に桜の魅力が多く集められていた。

京都にての地図(googleマップ)

 

折上稲荷神社

 花山稲荷神社から南下すること数分。次に訪れたのは折上稲荷神社。
 こちらの桜は鳥居の横に僅かに一本のみ。
 今回は桜がメインなので、以上。

折上稲荷神社ホームーページ⇒http://www.origami-inari.jp/

 

大石神社

 折上稲荷神社を出て東に向かい、次に訪れたのは大石神社。
 鳥居の横から参道にかけて桜が見頃を迎えており、その下ではお花見を開いている人々の姿もあった。
 しかし、大石神社の桜の最大の見どころは本殿に向かって右手にある『大石桜』と呼ばれるシダレザクラなのだが・・・残念ながら時期が過ぎてしまっていてほとんどの花びらを散らせてしまっていた。

 しかし、桜とは関係ないが、なぜか境内にはポニーが飼われていて・・・なぜに?と、お手製のおにぎりを頬張りながら、微笑ましく眺めた。

大石神社ホームページ⇒http://www.ohishi-jinja.jp/

 

岩屋寺

 大石神社を出て南下すると、すぐに岩屋寺の参道に出る。
 境内へと延びる石段の右手手前にちょっとした広さの広場があり、そこに幾本かの桜が植えられ、ベンチなどもあって近所の人と思われる方々がお花見をしていた。左手は駐車場になっているのだが、こちらにも桜の木が並び、石段までの参道は桜の花に包まれていた。
 一方、岩屋寺の境内に桜の姿はなく、元慶寺の『塀越しの桜』の理屈でいうと、果たしてこれを『岩屋寺の桜』と紹介してよいものか、とも思ったりしたが、そういえば右手の広場には岩屋寺のものと思わしき建物もあったので・・・これは『岩屋寺の桜』である、ということにしよう。。。

京都にての地図(googleマップ)

 

 続いて、岩屋寺のすぐ南手にある山科神社を訪れたのだが、桜は見当たらなかったので割愛。

 

吉利倶八幡宮

 山科神社を出た後は、少々長い距離を南へと歩き吉利倶八幡宮へ。
 こちらは北側の最初の鳥居の辺りに一本と、社殿へと向かう手前の川縁に桜を見る事ができた。
 いかにも地元の鎮守社という雰囲気の本殿に近付くと、数本の桜が見事に満開となっていた。

京都にての地図(googleマップ)

 

宮道神社

 吉利倶八幡宮の北側の参道を出て道を挟んだところに、宮道神社というこじんまりと整った社があった。ここは予定ではなかったのだが、本殿の手前が広場となっていて遊具などが置かれているのだが、その広場を挟んで本殿とは反対側に2、3本の桜が満開となって綺麗だったので、急遽追加。

 

勧修寺

 次に訪れたのは勧修寺。南側から進み、道なりに北へと折れると、門前の参道の右手に桜並木が続いていた。どれも比較的背の低い、けれど花びらの色には濃淡がある、華やかなグラデーションの一面を作っていた。
 山門を潜り中に入ると、右手にソメイヨシノが満開で、正面の建物横にシダレザクラ(写真上部)がこちらも見事に花開いていた。
 拝観料を支払い中門を抜けると右手に宸殿があり、その傍らに立つ桜はすでに多くの花びらを散らしていた。宸殿横から書院前を抜けて庭園へ。すでに花びらを散らしてしまった桜も散見されたが、池の傍らに立つ観音堂の周囲には、まだ花びらを多く保った桜が観音堂を取り巻くように彩っていた(写真下部)。おお、これぞなんか春の景色。

 勝手に勧修寺というネームバリューからイメージしていた程は広くない境内には、見る者を圧倒するような桜の群生はなかったが、散策しながらコンスタントに桜を楽しめた印象だ。

京都にての地図(googleマップ

 

随心院

 勧修寺を出たら、今度は一路東へ向かい、随心院を訪れた。
 まず総門の右手に桜が一本(写真上部)。他には境内に入り薬医門前が随心院の桜の見どころか(写真下部)。
 その後、堂宇にお邪魔し庭園なども拝観したが、こちらには桜の姿はなかった。その代わり、小野小町ゆかりの文塚を拝見しようと裏手に回っていく途中に、一本の決して立派とはいえない細身の桜が立っていたのだが、周囲を竹林に囲まれていた為に、緑の背景の中に立つ細身の桜が、妙に映えて美しく見えた。これぞ、演出効果の妙か。

 随心院には梅園があり、どちらかというと桜よりも梅の方がメインなのだろうか、という印象を受けた。

随心院ホームページ⇒http://www.zuishinin.or.jp/

 

醍醐寺

 当初の予定では随心院の後に岩屋神社を訪れる予定だったのだが・・・時間が足りない。なので、この日は岩屋神社を諦めて南下し、醍醐寺を訪れた。
 醍醐寺といえば、いわずとしれた桜の名所。豊臣秀吉による醍醐の花見は有名だ。有名なので、人も凄い。個人的に訪れるのは二度目だが、情緒に浸るには、どうも人が多過ぎる。それでもだ、やはり名所の名に違わない、境内総桜の景観、といった態だ。逆に桜が目に入らない場所はないのではないかと思える。
正直、醍醐寺は拝観料を支払わずに無料開放されている境内を歩くだけでもお腹一杯桜を堪能できるのだが・・・一応紹介する為に来ている以上、それもマズイか・・・と伽藍と三宝院の拝観券を購入。千円。なかなか。。。
 まずは伽藍へと。一番の見どころが五重塔だろうか。そして五重塔を望める清瀧宮本殿右手には大きなシダレザクラがあるのだが・・・残念ながら時期を逸していまっていた。これが満開であれば、さぞや見ものだったろうと思われる。その後も伽藍の間を散策したのだが、おそらく桜の種類の問題だろうが、どうもすでに花びらを散らせた桜の姿が多かった。外はあれだけ満開なのに、拝観料を支払い訪れた伽藍の桜は散った後・・・いや、後悔するまい。。。
 次に三宝院を訪れた。三宝院の桜といえば、大玄関前のシダレザクラ(写真下部)が有名だが、こちらもだいぶ花を散らしていた。それでも、まだ枝先には薄紅色が残り、過ぎゆく時を惜しむように、ゆったりとした風にそよいでいた。堂宇内の庭園は豊臣秀吉が醍醐の花見の際に自ら設計したといわれるが、さすがに桜ばかりでも芸がないと思ったのか――どうかは定かではないが、桜の姿はなかった。

 醍醐寺は桜の名所である。それは、動かしがたい事実だ。
 ただ、その分、人も多い。これもまた、動かしがたい事実だ。そんな事実を動かす為には、春眠、暁を覚えずといえども、ひたすら早朝を狙うしかないだろう。。。

 しかしだ、今回、本当は上醍醐へ初挑戦しようと考えていたのだが・・・時間が、そしてそれ以上に――足が限界に達しようとしていた。JR山科駅を出て、はや6時間近く経とうとしていた。足の付け根の筋とか、膝とか痛いし。昔はもっと無茶できたのにと、散りゆく桜を見上げては儚む。残念ながら、この日の上醍醐拝観は諦めた。

醍醐寺ホームページ⇒http://www.daigoji.or.jp/

 

一言寺

 痛む足を引きずりつつ、醍醐寺を出て南下し、最後に訪れたのは醍醐寺の塔頭でもある金剛王院、通称一言寺。 醍醐寺といっても距離が若干ある為に、また時間の関係もあるのだろうが、こちらまで訪れる人は稀なようだ。一組の家族連れがいただけで、他に観光客の姿はなかった。
 だが、こちらは完全の桜は終わってしまっていた。広くない境内に数本の桜を見る事ができたが、僅かに花びらを残していても、緑の葉が目立っていた。これが満開であれば、そして人も少ないとなればちょっとした穴場といえるかもしれない。

京都にての地図(googleマップ)

 

 以上、今回は山科区の桜見物をしてみた。その上で、勝手に桜ランキング!
 1位は、やはり醍醐寺だろう。境内に1000本の桜と言われる光景は、理屈抜きの華やかさだ。ただ、難点は繰り返しになるが、名所のさが、とにかく人が多いことだ。これは嘆いても仕方がない(というよりも、他人にしてみれば私も邪魔の一人)が、それを覚悟で挑む必要がある。
 2位は、勧修寺。ここも桜の名所に挙げられる一つだが、幸い平日だった為か思った以上に観光客の姿が少なく、のんびりと桜を楽しむことができた。
 3位は、毘沙門堂。本数としては、それほど多くはないが、やはり有名なシダレザクラの姿は美しく風情がある。
 その他、特に挙げるとしたら花山稲荷神社。まったく情報のない状態で訪れて、参道のあの桜並木を見た時には本当に美しいと感じた。後は、大石神社の大石桜は満開の姿を見てみたかった。

 総じて、シダレサクラの時期は過ぎ、ソメイヨシノは満開だったという印象。どれもこれもと欲張ってはいけない、というか自然の状態では根本的に無理なのだろうが、ぜーんぶの桜が満開で総見できないのが残念だ。
 それでも、多くの美しい桜の姿を望むことができ、山科区の桜パワーを存分に楽しむことができた一日だった。

 

 さて、別に追記する必要はないのだが、話はその後・・・
 一言寺を出た後、当初の予定では法界寺にも行けたら行きたかったのだが・・・無理。心も折れた。ひたすら直前の道路を見詰め続けながら、なんとかJR六地蔵駅まで歩き通した。運動不足?はい、そうです。加齢?はい、そうです。
 桜を愛でた心の平穏も、最早殺伐となって電車の座席に埋もれた。。。
 しかも翌日・・・なんか足の裏が肉離れみたいになってたし。。。

 計画は、無理のないよう、余裕を持って立てましょう。。。

(2013/04/13)

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