煎茶器

<煎茶器>

<店舗:七條甘春堂>
<価格(税込み):998円>

 

 ありきたりもないある存在が一般的役割を超えた時、そこには驚きと共に楽しみが生まれる場合がある。
 例えば料理。美味しい料理の後に、そのお皿まで食べられると聞けば、人はそれを珍しがり、喜んで口にするだろう。
 今回はそんな一品。器は器でも、その名も『煎茶器』。お菓子の茶碗で、もちろん食べれる。
 七條甘春堂では抹茶器も扱っているのだが、管理人は抹茶を嗜む術を持っていないので今回は煎茶器を購入した。
 京都といえば抹茶というイメージだが、抹茶ほどではないにしろ煎茶の歴史も深い。
 煎茶道が成立したのは江戸後期のことという。享保19年(1734)に売茶翁(ばいさおう)こと黄檗僧の高遊外(こうゆうがい)が東山に茶亭「通仙亭(つうせんてい)」を設け茶を提供したのに始まり、後に小川可進(おがわかしん)が煎茶手前を草案して煎茶道を流行させた。

 さて、そんな煎茶道とは縁もゆかりも無く、意識さえしたことない管理人は、高級茶など用意する訳でもなく普通に販売しているお茶を頂いた。
 煎茶器を購入すると干菓子が入ってくるので、まずその干菓子を頂く。うん、甘い。
 で、猫舌の管理人は熱いお茶を充分に冷ましてから口に含んだ。おっ、僅かに甘味があるお茶になっている。どうやらお茶に程よく器が溶けて甘味がお茶に混ざったようだ。また口を付けた部分も溶け出し、口内に甘味を運んでくれる。これは意外と美味しいぞ。甘味が加わることによってお茶の風味がまろやかになったような気がした。ただ・・・底に溜まったお茶を飲み干そうとした時、その味はまろやかさを通り越してお茶としては甘すぎた。要するに器から溶け出した甘味が沈殿した影響だ。
 一杯のお茶で味が変わるというのは乙な味わいだが、熱いお茶の場合は甘くなりすぎる前に飲み干してしまうのがお薦めと感じた。冷茶であれば、器が溶けにくくなるので、また違うのだろうが。
 なお、管理人は5、6杯熱いお茶を注いで頂いたが、その間に器が溶けて漏れるようなことはなかった。
 そして、いよいよこれぞ醍醐味。パクリと器に噛み付いた!う~ん、甘い!そして、ちょっと子供心に帰って楽しいぞ!一口ずつ器が崩れていく度に、まるで親の教えに背いて小さな悪事を働くことに感じる、あのくすぐったい喜びに似ているだろうか。本来器を欠けさせてはいけない物を、堂々と欠けさせる快感。
 う~~~ん、甘い!!

 干菓子の良し悪しを知らない管理人としては、この器の和菓子としての評価はしかねるが、それでもこの楽しさは買だろうと評価する。
 遊び心に富んだ和菓子として、管理人は充分に満足させてもらった。
 悪戯心に、誰かにプレゼントしてみてその反応を見てみたいとも思ってしまう。そんな遊び心を引き出してくれる一品だ。

(2009/07/26)

七條甘春堂ホームページ⇒http://www.7jyo-kansyundo.co.jp/

京都にての一品トップへ トップページへ