きぬた

<きぬた>

<店舗名:長久堂>
<価格(税込み)840円>

 

 そもそも「きぬた」って言葉はなんぞや?聞いたことあるような、けれどはっきりとそれがなんなのかがわからない。では調べてみよう。
 三省堂の国語辞典には「むかし、織った布をのせてたたいた木の台。布の表面を滑らかにして艶を出すために使う」とある。
 さらに大辞泉では上記の他にも「――つやを出したりするのに用いる木や石の台。また、それを打つこと」
 長久堂の初代が布を打つ音を聴き、その幽玄なる風趣に創作したというのか今回紹介する名菓『きぬた』。明治初年パリ万博博覧会にも出展されたという由緒をもつ。

 一本の棒状の『きぬた』を輪切りにすると写真のような姿。中心は羊羹でその周りを求肥で包み、その表面には和三盆糖がまぶされている。このイメージは反物?それとも布を打つ棒の方?いまいち見ただけではわからないが、とりあえず頂こう。
 香りは、和三盆糖の仄かな漂い。
 齧ってみた。周りの求肥はもちもちとした感触。中の羊羹は弾力のある歯応え。
 まず和三盆糖の柔らかい、それでも一番直接的な甘味が口の中に広がる。和三盆糖が溶けていき、咀嚼していくと今度は求肥のねっとりとした舌に纏わる甘味があり、その中に羊羹の豆の風味が活きている。
 うん、ザッツ茶菓子。ああ、お茶が本当によく合う。
 ただ普段のおやつ、という見方をした場合、洋菓子などに慣れ親しみ、それらを好みとする人、特に若い人にとっては一口の体験としては喜ばれても、常に口にしたいかというと味のバリエーションとしてはとてもシンプルで少々その力は弱いか。もちろん、伝統和菓子である『きぬた』をそれらと比較するのが妥当かという問題はあるが、とりあえず思ったこととして一筆。
 それでも管理人は非常に美味しく頂いた。あとは・・・抹茶とはいわないが、もう少し良いお茶を用意すればよかったと個人的後悔。

 音からのインスピレーションとして脳裏に浮ぶのは、まずは映像イメージだろう。直線的に音=味というのは共感能力でも備わっていない限り難しいだろう。
 ということは『きぬた』は姿から先に出来上がったのだろうか。そしてその姿に、この様な繊細な風味が備わったのはまさに職人のインスピレーション。
 お茶を口にした時、欲するインスピレーション。
 『きぬた』は最適の甘味を提供してくれるだろう。

(2010/06/22)

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