どら焼

<どら焼>

<店舗名:笹屋伊織 >
<価格(税込み)1365円>

 

 どら焼。と聞きくと真っ先に思い浮かべるのはドラえもん。その形状や味よりも先に、ドラえもん。なので、どら焼とはお菓子というよりも「ドラえもんの好物である食べ物」という認識。当然、どら焼を目の前にすればドラえもんが連想される。
 そんは一般的などら焼といえば、その名称の由来ともいわれる銅鑼に似た形状の二枚の生地で餡子を挟んだもの。ドラえもんの好物も、このどら焼。では、その形状以外にどら焼があるのか?幼少からドラえもんに慣れ親しんできた人間には不可思議な話なのだが、京都には別のどら焼があった。どらはどらでも、こちらの由来は銅鑼で焼いたからどら焼。
 その始まりは江戸時代末期とのこと。東寺のお坊さんより副食になるようなお菓子の製造を依頼された現在も販売元である笹屋伊織の五代当主が考案したものだという。これが話題となり、弘法大師の月命日である21日限定で一般にも販売されるようになったのだとか。現在、販売は3日間に延長され、20~22日の限定販売となっている。

 さて、ようやく都合が合って手に入れた笹屋伊織のどら焼。頂いてみる。
 包装紙に書かれている「どら焼の召し上がり方」は、1にそのまま。2に電子レンジや蒸し器で。3に天ぷらやオーブントースターで、とある。しかしこの包装紙に気がついたのは、実は全て食べ終えてから。全部そのまま普通に食べてしまった。これから書くのはその感想であることを了承頂きたい。ああ、勿体無い。
 どら焼を包んでいる竹の皮を剥がしながら、おっと?あくまでも一般的などら焼と形状だけが異なり、生地の部分などは同じようなものだと勝手に想像していたのだが、竹の皮がだいぶ湿り気を帯びている。あの下手するとパサパサしてしまうようなどら焼の生地とは違うのかな?と、ここに至り気付いた。皮を剥がしてみると、なるほどもっちり、しっとりとした生地だ。
 特別、これといった香りはない。一口。ん?その生地の食感といい、風味といい、一番に頭に浮んだのは「これ、生麩?」。一般的などら焼をイメージして口にすると、それはまったくの別物。包まれた餡子は普通に美味しいのだが、期待していた味とのずれは最初違和感を生み出し、どうも素直に美味しいとは思えなかった。頭を切り替えろ、頭を切り替えろと念じる。これはどら焼だけれど、どら焼にあらず。これはこういうものだ。と、先入観を捨て去り、もう一度トライ。
 慣れてくると、これはこれで美味しいな、との結論に落ち着いた。生地はもっちりとして程よく抵抗ある食感を生み出し、淡白な生地と甘すぎない餡の融合も無難にこなしている。惜しむのは、やはりオーブンで一度こんがりと焼き目を付けて食べてみたかった。そうすると香ばしさが倍増して、また違った風味を味わえたかもしれない。説明書はまず最初に読まなくちゃいけないよ、といういい例で。

 果たして、ドラえもんならばこのどら焼は好きであろうか?そもそも、なんでドラえもんはどら焼が好きなんだっけ?まぁ、それはいいかげん横に置いといて。
 それにしても、江戸末期から京都の人々に親しまれている銘菓どら焼。そのスタンダードな人気の秘密はなんであろうか。もちろん、美味しさ。そして変わらぬ味を守り続けているというのもあるだろう。それともう一つ気になるのは、やはり毎月21日限定(現在は20~22日)商品であるというところだろうと思う。欲した時に食せぬもどかしさ。これほど人の欲求を高めるものはなく、また巧妙なスパイスもないだろう。
 「限定」の言葉に弱い日本人とは良くいわれるが、
 『時代に限定されない限定銘菓』
 どら焼は独自の地位を今後も守っていくことだろう。

 同店別商品:伊予柑「京柑露」

(2010/12/09)

笹屋伊織ホームページ⇒http://www.sasayaiori.com/

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