<朝摘みトマト>
<店舗名:清閑院 >
<価格(1個)241円>
※販売期間:5月中旬~8月中旬
暑い夏の日、涼味を求めればアイスにかき氷、そうめんに冷やし中華と諸々あるが、勝手に思い浮かぶのは冷たい流水の中の桶に浮かぶ夏野菜の姿。きゅうりにとうもろこし、そしてトマト。その情景には郷愁を誘うような情緒があり、口にすればこれまた涼やかな風味が体内に吹き込む。
あいにく冷蔵庫で冷えたトマトしか食べた記憶がないが、思い込みまかせに呟いてしまいたくなる。――ああ、懐かしき日本の夏。
そんな情緒をそのままお菓子にしてしまったのが、今回紹介する清閑院の「朝摘みトマト」。最初商品を見た時にはプチトマトがそのまま入っているのかと思ったが、よくよく見ると、どうもトマト表皮の張りがない。これはなにかあるなと早速頂いてみた。
市販の一口ゼリーのような容器に入った「朝摘みトマト」。封を開いて中身を取り出そうとしたが、なかなか出てくれない。フォークで空気が入るように道を作り、何回か振ったらようやく用意した皿の上に落ちてくれた。
見た目、トマトの赤はとても鮮やか。本物のトマトであれば熟し切っているような色合いだ。トマト嫌いの人によっては敏感に嗅ぎ取られる、あの青臭い香はさすがに再現されていないようだ。
一口頂く。
おお、トマトの正体は餡だった。原材料を確認すると白餡となっているので、着色することによってトマトに見せているようだ。ただし、とても瑞々しいといえばよいのか、ポーンと頭に閃いたのは「ジュレの様?」という感想だった。てっとり早くいえばとても水分の多い餡子。今までにない食感の餡子だった。その反面、水を表現しているだろう寒天には程よい弾力があり、確かな舌触りを口内に残した。
味といえば和菓子なのだから当然甘味があるのだが、その中にトマトを意識した酸味が効いて、この酸味が甘味に混ざって面白く、また涼味を呼び起こし、和菓子としては余り食したことのない風味を感じさせてくれた。
うん、これぞ夏ならではの和菓子という感じで美味しかった。
輝く流水の水面の底に沈む赤きトマトを思い浮かべれば、そこには瀬音が優しく響いているだろう。また心地よい風が頬をかすめ行くだろう。風は軒先に吊るした風鈴をそよがせ、涼やかな音を奏でるだろう。広き青空に、遠く沸き立つ入道雲。ああ、暑いけど気持ちいい。
そんな連想の切っ掛けになってくれるかもしれない「朝摘みトマト」には、日本の夏の情緒が詰め込まれている。
暑中見舞いという言葉がとても似合いそうな和菓子だ。
そして食べる時にはもちろん、しっかりと冷やしてからがお勧めだ。
同店別商品:紅葉よそほい