とりどり最中

<とりどり最中>

<店舗名:甘泉堂>
<価格:525円>

 

 確か何かの雑誌で「とりどり最中」紹介を見て以来、以前から気になっていて、ああ、行かなければ・・・と思い続けていた甘泉堂。日曜日が休みなので、なかなかタイミングが合わずに通り過ぎてはや何年?そのお店は、四条通に繋がる細い路地を入ったところにある。知る人でなければ見向きもせずに通り過ぎてしまうだろうと思われる程に、その路地は狭い。その狭い路地を入っていくと、明らかに観光客相手の華やかな店構えとは違う、地元に根差した老舗の、ひっそりとした佇まい。作られた和菓子が並ぶこともなく、商品案内はディスプレイのサンプルのみ。
 引き戸を開けて店頭に入り、御世辞にも広いとは言えない店先で、対応して頂いた男性に予定通りに「とりどり最中」をお願いする。すると、注文を受けてから最中の餡子を詰めてくれた。
 完成した最中を紙袋に入れて貰い、店を出る。ようやく「とりどり最中」を手にすることができた、という満足感が足取りを軽くした。

 軽くなった足取りで、調子こいた訳ではないのだが、散々京都市内を歩き回った結果・・・紙袋が最中にくっついて折角の焼き印が一部見えなくなってしまった。ケチらずに、箱に入れて貰えばよかった。。。
 さておき、ようやく手にした「とりどり最中」。最中の表面に押された四つの焼き印の絵柄は、春夏秋冬をそれぞれ表しており、まず見て楽しむ。そして、それぞれの区画には、春は大納言粒餡、夏は緑色柚子餡、秋は小豆漉し餡、冬は斗六粒餡、4種の餡がそれぞれ詰め込まれており、とりどりに味を楽しむことができる。
 では、まず春の大納言粒餡から。うん、飛び切りインパクトがあるような風味ではないが、至って普通に美味しい。そして、やはり餡は粒餡に限る。
 夏は緑色柚子餡。手芒豆を使用しているようだが・・・てぼうまめ?調べてみたら、白いんげんのようで、白餡などに使われるらしい。なるほど。それに柚子を入れて柚子餡としているようだ。うん、柚子の風味がほんのりと香る。
 秋は漉し餡。普通に美味しい。個人的には食感の楽しみという点においては粒餡に劣る。
 冬は斗六粒餡。斗六って何ぞや?と調べてみたら、北海道産の白いんげんの品種名の様だ。原材料には柚子餡と同じく手芒豆とあるので、つまりは白いんげんの粒餡ってことのようだ。粒餡がやっぱりいい。それと、原材料を見るとすべての餡に寒天を入れているようなのだが、この斗六粒餡は寒天のプルプルとした弾力を感じられ、豆の粒と混ざり合って面白い食感となっており、一番印象に残った。風味もあっさりとして食べやすい。

 正直、見た目にも、香りにも、食感にも、風味にも派手さはない。けれど、一枚で四種の餡を食べ比べできるという楽しみがあり、またその四種には四季の季節感が込められている。まさに、京都の和菓子職人が、京都の季節の風情を愛し、持てる技巧の中で創作し生み出された一品といえるのではないだろうか。
 京に漂う、四季の風情を食べ比べ。
 一度食べしてみるのも、また風情か。

(2013/10/27)

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