<走井餅>
<店舗名:やわた走井餅老舗>
<価格:630円(税込)>
京都検定の勉強をしている際に京都検定公式ガイドブックにも記載があり、石清水八幡宮と関連付けて覚えたのが、走井餅老舗の菓子である『走井餅』。
由来書によれば、明和元年(1764)に大津の地で走井の名水を用いて餡餅を作ったのが始まりだという。
その後、明治43年(1910)に京都八幡に支店を出して以降、八幡名物となり、大津の本家が廃業した後も八幡では作り続けられてきたという。
大津本家の創業より今年で250年。本当に長い伝統を持つお菓子だ。
では早速頂く。
まず、その形状は細長い独特のものとなっている。なんでも、謡曲「小鍛冶」にも取り上げられる平安期の刀匠、三条小鍛冶宗近が走井の名水で剣を鍛えたという故事にちなみ、刀の荒身を表しているのだという。なるほど、刀身には似ても似つかないが、方向性は理解できた。
蓋を開けた際の漂うような香りは特にない。
『おいしくお召し上がりいただくために』という説明書に「箱への付着防止のため、でん粉をまぶしているが、食べても問題ないけど風味が劣るので、よく払ってから食べてね」という趣旨の記載があった。ああ、よくスーパーとかでも売っている大福にも粉がまぶしてあるけど、あれってそういう意味だったのね、と味とは関係ないところで今更ながら感心してしまった。ということは、スーパーの大福も粉を払って食べた方がいいのかな?・・・と、少々話がずれてしまったが、今回は説明書通りにしっかりとでん粉を払ってみた。
一口。餅の食感はやわやわという訳ではない。どちらかというと、しっかりとした食感がある。これは餅の鮮度の問題だろうか。 それとも刀身をイメージするだけに、このもちっとした歯応えも狙いだろうか。
そして中の餡は、やや甘めだが、口の中で餅と混ざり合うと丁度良い甘味となる。特徴としては、水分が多めというところだろうか。ここで思い出したのが、こちらも北野天満宮門前の名物として有名な「長五郎餅」だ。勝手に「トロトロ長五郎」と名付けてしまったぐらいの餡の緩さに驚いたものだが、その餡の感じにとても似ている。もしかして、昔から続くお菓子の餡というのは、こんなトロトロ感がスタンダードなのだろうか?
そして風味もスタンダード。普通に美味しい、というのも長く愛される秘訣か。
ペロリと頂いてしまいました。
その身は刀身の如く切れ味は抜群?といえば、そんなイメージは持てない。
刀で例えてしまうなら、切れ味の悪いなまくら刀かな。
けれど、そんななまくら刀だからこそ、人を斬って関係を絶つのではなく、アンニュイ故の親しみが関係を維持し、伝統を紡いできたともいえるだろう。
突飛な発想だが、いうならば『刀身界のゆるキャラ』??
それも、至って美味しいゆるキャラである。
そうそう、餡子もゆるいし。。。