<金魚・花火>
<店舗名:松彌>
<価格:各310円>
京都の夏の和菓子といえば、寒天や葛を使ったものが多いように思える。それは夏の暑さの中、食感や喉越しを楽しむ為のものであろう。
更に、その意匠を夏の風物で象れば、風情が心に涼風となり、暑さを和らげるというものだろう。
そんな夏場の「涼」を演出する京都の代表的な和菓子の一つが、松彌の『金魚』(写真左)ではないだろうか。
なお、今回は一緒に『花火』(写真右)も買ってみた。夏の風物詩といえば、花火でしょう。。。
まずは『金魚』。
爽やかなブルーで表された水の中に、赤と黄色の金魚が泳ぎ、中心には蓮?の葉が浮かぶ。もう、見るからに涼!
とりあえず見る。見て楽しむ。そして、涼む。視覚的な演出が見事というしかない。
封を開けてみると、梅の香りが僅かに漂う。原材料を見てみると、梅酒が含まれているようだ。
では、一口・・・となるまでに、これ程までに時間が掛かったことがあっただろうか、という程に見て楽しんでから、ガブリっといってみた。ああ、勿体ないと思いつつ。。。
全体は寒天でできていて、金魚と葉っぱは煉餡で出来ているようだ。寒天には香りの通りに梅酒が含まれており、爽やかな風味となっている。食感は寒天のホロホロ感が主で、金魚と葉っぱはいつの間にかに口内で溶けて消えてしまっていた。
食感と風味については見た目ほどの強いインパクトはないが、涼味を覚える美味な作りとなっていた。
では『花火』を。
見は目は実に華やか。花火の一瞬の煌きを表すのに、底には餡を敷き詰め夜空を演出し、上部の寒天の中に色付けした煉餡と金箔とで色鮮やかに飾っている。これまた、視覚的な演出に優れていると思えるが『金魚』と対比をしてみると、個人的には『金魚』の方がシンプルで好み。
封を開けてみる。こちらも寒天に梅酒が使われているようだが、その割合の為か『金魚』の時のような香りは漂わなかった。
ああ、またもや我が歯牙で姿を崩すのを惜しみつつ。
寒天の部分はホロホロと。餡の部分はねっとりと。『金魚』との違いは餡の存在で、餡に含まれる甘味があり『金魚』よりも風味の重みを感じさせる。なので涼味という意味では『金魚』の方が感じられるが、和菓子を食べた!という感想を強く抱くのは『花火』ということになるだろうか。
こちらもまた、美味で御座いました。
なお、『金魚』は夏季限定の一品となっている(※おそらく『花火』も)のでご注意を。
まさに、夏にしか楽しむことのできない風物詩――
って、ちなみに【風物】の意味ってどんなんだ?と調べてみたら、
・その季節の特色あらわす風景やものごと。ながめ。(三省堂国語辞典)
とあった。なるほど。
夏の風物菓子。
今回紹介した一品には、そんな呼び名がぴったりだ。