<松風>
<店舗名:亀屋陸奥>
<価格(税込):1100円>
時は戦国乱世。織田信長は敵対する本願寺勢力を討つ為、石山本願寺を包囲した。その戦いは11年にも及んだが、多くの時を本願寺勢は籠城して堪えた。
そんな中『松風』生まれたという。
籠城する門徒達の空腹を満たす為に兵糧の一つとして創製されたのが始まりだそうだ。
織田家との戦いの後は菓子として親しまれ、今に至るという。
見た目カステラのようだが、卵が使われていない為、側面はカステラよりも白い。
触ってみると、カステラというよりも固めのパンを触っている感じ。フランスパンよりしっとりとしているが、堅さはフランスパンのイメージに近い。
香りは・・・なんだ、この香りは、と思い原材料を見てみると麦芽飴と書かれている。おそらく表面の艶出しに使われているのだろうが、麦芽飴の香りが印象強く漂う。
一口頂く。
食感は・・・歯の圧力に潰れるように縮み、堅さをます。噛み切るというよりも、噛み千切るといった感じ。やはりフランスパンが近いか。
風味の第一印象は香り同様、麦芽飴が強いか。それを下支えするような感じで白味噌が後からじわりとくる。後はケシの実の風味も別途やってくる。
見た目からイメージ(カステラに近いのかな?)していた食感と風味とは全然違うな、というのが感想。
お菓子というよりも、兵糧の経歴は伊達ではなく、どちらかというと何度も上記したがパンに近いだろうか。
簡単に「美味しい」というよりも、噛めば噛むほどに癖になりそうな味わいだ。
『松風』の銘は本願寺第11世顕如上人が、
「わすれては 波のおとかと おもうなり まくらにちかき 庭の松風」
と呼んだ歌より賜ったという。
顕如上人は石山本願寺退去後、京都六条堀川の地に落ち着くまでに紀伊の地、現在の和歌山県にて流転の日々を過ごした。きっと、その頃に耳にした波の音を、庭の松を通る風音に聞いたのであろう。
噛み締める程に滲む味わい。
『松風』には、戦国という困難な時代を生き抜いた人々の記憶が残されているようだ。