「2012桜見物」

 

 4月某日。本年も行ってきました桜見物。
 今年は少々時期が遅くなてしまい、京都各地は葉桜の頃。
 こうなると、残っているのは遅桜で知られる仁和寺しかない!ということで、仁和寺を中心にその周辺を巡ってみることにした。
 久し振りにJRを使って京都駅へ、乗り換えて花園駅へ。

 

法金剛院

 花園駅を出て北側の道を西に向かうと、ほどなく法金剛院の門が見えてきた。
 法金剛院といえば、今年の大河ドラマ「平清盛」の中で、壇れいさんが演じていた待賢門院璋子が復興し、晩年を過ごした地として知られる。
 現在では「蓮の寺」と通称されるように7月初め~8月上旬にかけて見頃を迎えるようだが(境内のそこら中に蓮の根が入った鉢が並んでた)、桜もまた「待賢門院桜」と呼ばれる枝垂桜を有し、桜の名所というほどではないにしろ人々の目を楽しませている。
 さて、その待賢門院桜(おそらく礼堂前の枝垂桜のことと思われるが)はというと、だいぶ花弁を散らし緑の葉を備え始めたとはいえ、その丸みを帯びたふくよかな姿は女性の姿を思わせ、絶世の美女であったという待賢門院の優雅な姿を今の世に伝えているようだ。
 境内全体としては、桜はあくまでもまばらであり、控えめに花の寺の季節の一部を飾る役目に徹しているかのように思えた。
 やや時期が遅れ、また平日であったこともあり、境内を訪れる人は少なく、とても静かに、あと数日の華麗さであろう待賢門院桜の残り香を嗅ぐ心地にて眺めることができた。

京都にての地図(googleマップ)

 

退蔵院

 次に訪れたのは妙心寺内にある退蔵院。
 こちらも桜だけではなく、四季折々に季節の花々が咲き誇る花の寺として有名である。
 また花以外にも山水画の始祖といわれる如拙が描いた「瓢鮎図」は国宝に指定されており、「元信の庭」と呼ばれる枯山水庭園は室町時代の絵師である狩野元信の作庭と言われている。しかし、残念ながら「瓢鮎図」は非公開であり「元信の庭」は本堂縁側からの鑑賞しか叶わない。
 そこで鑑賞のメインとなるのが昭和の造園家中根金作の設計による「余香苑」で、桜はその入り口付近に配されている。
 こちらの桜もまた時期を過ぎ、新緑が芽吹き始めていたが、まだまだ見応えがある姿を保っていた。また、その桜の房の内側から見通す枯山水も趣があり、この季節ならではの色彩を枯山水に配していた。
 退蔵院もまた法金剛院と同じように「花の寺」を謳うだけに桜一辺倒ではない分、季節の一風景として静かに庭園に佇んでいるといった風情だった。

 法金剛院、退蔵院共に、桜を見る、というよりも季節を楽しむ、といった感じだろうか。

妙心寺退蔵院ホームページ⇒http://www.taizoin.com/

 

大法院

 予定にはなかったのだが「新緑」の謳い文句に誘われて、特別公開となっていた退蔵院と同じ妙心寺内にある大法院にも寄ってみた。
 門を潜り拝観料を支払うと、お堂までの間に二本の桜の木が立っていた。共に葉桜となり見応えという点においてはいまいちであったが、時期さえ逸しなければ見事な桜花を楽しむことができるだろう。
 大法院の見どころは、客殿を囲むようにして広がる「露地庭園」で、大法院のパンフレットには初夏と秋の写真が掲載されており、その二つの季節こそ見頃なのだろう。そういう意味では初夏には少々早すぎ、期待したような「溢れ盛り上がるような緑!」という景色には程遠かった。
 特別公開を告知する看板の緑が余りにも鮮明であったのが期待過剰にし裏目に出てしまった。

 なお、大法院は真田幸村の兄である松代藩主真田信之の菩提寺である点を、ミーハー心で記しておく。

妙心寺ホームページ⇒http://www.myoshinji.or.jp/

 

仁和寺

 さて、ついにメインの仁和寺。
 って、平日にも関わらず凄い人。人。人。
 京都市内の他の桜の名所はすでに盛りを過ぎ、残すところは仁和寺ばかりと桜目当ての観光客が一斉に仁和寺に集まったような状況だった。
 しかし、訪れた人々の期待を裏切らず、仁和寺の桜、通称「御室桜」は満開で人々を迎えていた。個人的に、桜の時期の仁和寺は2度目の訪問。
 今年の御室桜も花弁が群生しているので、目の前に肉厚の姿を重ねていた。可憐だとか、壮麗だという流麗たる賛美よりも、貫禄だとか、荘厳といった厳かなる称賛の言葉が似合うように思えた。もちろん美しい、美しいのだが、美しいという言葉で片付けるには視覚的に重々しい。

 仁和寺は間違いなく桜の名所である。
 観光のメインとして、充分に訪れた人々の心を満たすに余りある。

仁和寺ホームページ⇒http://www.ninnaji.or.jp/

 

三宝寺

 最後に訪れたのは三宝寺。
 仁和寺から周山街道を西に歩くこと1km ぐらいだろうか、最後に傾斜のきつい坂道を登っていく。周辺の桜はすでに花弁を残さずに散り、青々とした若葉にその身を覆っている姿だったので半分諦めの気持ちでいたのだが、三宝寺を望める地点に辿り付いた瞬間、遠目に「御車返し」の桜の姿を見た時、勝手ながらも「待っていてくれたか!」という感動に襲われてしまった。訪れるのは2度目も、はい、待ってなどいません。
 「御車返し」の桜は、元々菊亭家邸内にあったものを宝暦年間に移し替えたものとのこと。
 桜の名所といわれる仁和寺とは一変。訪れた時には一人の観光客の姿があったが、すぐに帰られたので境内独り占め。桜のすぐそばにあるベンチに座って、心行くまで名桜を鑑賞できた。
 全体的に幅広で、写真でいう右辺にて一気に花弁を流れ落とす姿は滝のようであり、静的な左辺から動的な右辺へという流動的な姿が特徴的だ。
 さすがに最盛期は過ぎていたが、独り占めというシチュエーションと共に満足に足る一時を過ごせた。
 境内には「御車返し」の桜の他にも数本の山桜の若木が点在しているので、これらが成長した暁には、桜の季節にはさぞや華やかな情景を作り出すだろうと推測される。

三宝寺ホームページ⇒http://www.sanpouji.or.jp/

 

 以上、今年の桜見物は時期が遅くなってしまったので、全ての場所において満開というわけにはいかなかったが、法金剛院、退蔵院には桜に限らない「花の寺」としての総合的な風情があり、仁和寺は仁和寺で圧倒的で、三宝寺は毎年のように訪れたくなる親しみがあった。

 見物終了後、嵐電に乗って嵐山へ。
 この時期といえば琴きき茶屋の桜餅。とばかりに渡月橋の袂にやってきたのだが・・・定休日だった。
 ノン!

(2012/04/26)

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