<京フィナンシェ/京ダックワーズ>

<店舗名:ル マルタン ドゥ ミソ(本田味噌本店)>
<価格(税抜):フィナンシェ160円/ダックワーズ180円>

 

 和魂洋才。味噌と洋菓子。
 それは実に突飛な組みあわせに思える。
 味噌と言えば味噌汁に代表されるような、数々の料理の風味を彩る調味料というイメージで、味覚のイメージ的にはしょっぱい、塩辛いといったところだろう。
 だが、実は味噌は甘いのである。甘味のポイントは大豆に混ぜ込む米や麦の比率。「麹歩合」というそうで、麹歩合が高いほうが甘口になるのだそうだ。米や麦に含まれるデンプンが麹のアミラーゼにより分解、糖化されることによって甘味が生み出される為だという。
 甘い味噌の代表格に「麹歩合」を高くして作られる白味噌がある。
 白味噌といえば、以前紹介した和菓子『松風』にも使用されており、一括りにした味噌のイメージで洋菓子との組み合わせを考えると突飛となるが、種類豊富な味噌を丹念に探れば、お菓子にも適した味噌があるようだ。
 それこそ、味噌をよく知る味噌屋ならではのアイデアだ。

 まず最初に、京(みやこ)フィナンシェ(写真左)を頂く。
 見た目は至って普通のフィナンシェ。香りを嗅いでみれば、なるほど、うっすらと味噌の香りがする。
 では一口。
 しっとり、ふわっと。べた付かず、パサつかず。丁度良い、歯応え。
 そして・・・味噌だ。味噌の風味がしっかりとあり、塩味と甘味の調和。あと、柑橘系の風味が香るな、と思ったら、白味噌の他に柚子味噌を使用しているとのこと。なるほど、柚子の風味が加わることによって爽やかなアクセントとなっており、全体の風味を軽やかなものとしている。
 明らかな味噌。けれども、フィナンシェとしての作りとして大きな違和感なく、なるほど、こういう風味になるかと感心させられる美味しさを覚えた。
 
 次に京(みやこ)ダックワーズ(写真右)を。
 こちらも見た目は至って普通のダックワーズ風。満月のような形が可愛らしい。
 香りを嗅いでみると、味噌の香りは感じられない。普通のダックワーズのように小麦の香り。
 食感は、サックリ、サックリと。好ましい歯応え。
 で、問題の風味はというと、生地には小麦粉、アーモンドプードル、きな粉が使用されているそうで、味噌は挟まれたクリームに使用されているとのこと。なので、口にした瞬間は味噌の風味をほとんど感じなかったが、噛み締めるにつれ、挟まれたクリームが口内に広がりだすのに合わせて、全体の調和を崩さない、優しい味噌の風味がほのかに広がった。こちらは白味噌と隠し味として赤味噌を使用しているとのこと。
 うん、なるほど、こちらも確かに味噌だ。こんなダックワーズも全然ありだなと思える美味しさ。

 個人的にどちらが好みか?と問われたら、フィナンシェの方を挙げる。フィナンシェの方が味噌の風味がはっきりとしながらも、フィナンシェの印象を崩すことなく、かつ柚子の風味が好ましかったからだ。
 これぞ、和魂洋才の言葉にふさわしい。

 しかし、一昔前であれば味噌を洋菓子に使うなんて発想はなかなか出てくるものではなかっただろうが、近年盛んな日本食材の価値の再発見を求める時代の流れが、味噌にも新たな可能性を漂わせ始めたのだろう。
 味噌の多様性を活かした一品。
 味噌の新たな可能性を、味わってみてはいかがだろうか。

(2018/04/19)

ル マルタン ドゥ ミソホームページ⇒http://www.honda-miso.co.jp/le_martin_de_miso/

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