「2017桜見物」

 

 4月某日。
 今年は近年では珍しく、桜の開花が遅れた印象がある。
 それでも着実に京都の桜は花ひらき、訪れる人々の目を楽しませる。
 ただ、当日は生憎の曇り空。雨は降らなかったが、白桃色の桜の花弁は白雲と同化してしまい、どうしても見栄えが期待値よりも低くなってしまいがちなのが残念だ。

 さて、今年は桜見物の前に腹ごしらえ。
 丸太町十二段家で「水菜」を頂く。別途紹介している「すずしろ」の一段上のメニュー。「すずしろ」よりも碗物が一品多くなるのだが、その碗物が季節によって変わるので楽しみにしている。この日は蕗と筍の煮物。蕗の程好い苦味が春の訪れを感じさせ好ましい。

 そんな訳で起点が十二段家となったので、そのまま京都御苑へと向かい桜見物を始める。

 

京都御苑

 京都御苑は桜の時期に何度も訪れているが、時期が遅くなることが多い。その為「出水のシダレザクラ」と呼ばれる下立売御門から入ったところにある枝垂桜はいつも花弁を散らしていることが多いのだが、この日は多少散ってはいたものの、まだ見頃の姿を残していた(写真)。
 京都御苑の桜の見所といえば、この他にも京都御所、清所門の南側向かいにある「車返桜」や、近衛邸跡の枝垂桜群があるが、それぞれに見頃を迎えており、多くの観光客で賑わっていた。

 京都御苑の良さは、なんといっても広々とした空間と共に桜を楽しめるところだろうか。遠目からの眺望も可能となり、様々な視点で桜を楽しむことができる。また、いくら観光客が多くてもあの敷地を埋め尽くすのは難しく、密集の中の移動に疲れ果てるような、そんな心配がないのも有難い。

京都御苑ホームページ⇒https://www.env.go.jp/garden/kyotogyoen/

 

 京都御苑を南から北へと通り抜け、石薬師御門から苑外へと出る。
 次への目的地へと向かう途中、ちょっと寄り道して今出川通を河原町通まで出て少し北上し、出町ふたばへ。この時期ならではの桜餅と、ふたばといえば「豆餅」ということで購入。帰ってからの楽しみとする。

 

本満寺

 次に訪れたのは本満寺。
 門前左手に、まず妙見宮があり、お堂の周囲が桜で囲まれ、早速、桜見物のお出迎えを受けた印象。ただ、時期としてはすでに葉桜になっており、空模様の影響もあり、少々くすんだ印象となってしまっていた。これが満開で晴天であったならと惜しむ。

 山門を潜った左手に、一番の見所である枝垂桜が雄大な姿を見せていた。高さもあるが、幅に広がりがあり、白桃色の花弁が視界を大きく埋めてくる。
 こちらの枝垂桜もすでに満開の時期は過ぎてしまっていたようで、地面を散った花弁が薄雪のように染めていたが、それはそれで季節の移り変わりの表現とした一場面の情景として、趣を持ったものに思えた。

 本満寺には上記の枝垂桜以外にも、所々に桜が花開いており、決して広くはない境内をこの時期ならではの春色に染めていた。

京都にての地図(googleマップ)

 

相国寺

 本満寺を出て上立売通りを西へ向かう。
 途中、相国寺境内を通り抜ける。
 高く緑の葉を茂らせる立木の間に、桜の花弁が浮かんでいた。通り過ぎる範囲でしか見渡せなかったが、やはり時期は過ぎていたようで葉桜であり、曇り空が鮮やかさを奪っていまいち印象は薄いものとなっていた。

 とりあえず、今回は通り過ぎただけの状況報告。

相国寺ホームページ⇒http://www.shokoku-ji.jp/

 

上京区公園

 更に道すがら。
 とある公園の桜が余りにも綺麗だったので撮影してみた。曇り空の下でも鮮やかさを失わない、紅桜の力強さに感慨を覚える。桜は散る姿の儚さも魅力ではあるが、説明の要らない圧倒的な華やかさもまた、その魅力の一つといえるだろう。

 名もなき桜の銘木。
 観光の注目は浴びないかもしれないが、地元で物語を生む可能性を秘めた魅力を感じさせる。

京都にての地図(googleマップ)

 

妙顕寺

 さて、今度こそ次の目的地の妙顕寺。
 門前左手に紅枝垂桜が2本。それほど高くない背に花付きは良くなかったが、地面に散った花弁が見られなかったのと、枝に蕾が見受けられたことからすると、少々時期が早かったか。
 一方、境内に入ると満開となった桜の木が境内に点在し、見応えのある光景となっていた。特に本堂向かって左手にある鐘楼周辺は数本の桜が並び、見る角度によって厚みのある花弁の層を成していた(写真上部)。

 本殿の左側を抜けた先にも桜(写真下部)。
 更に本殿の裏から右手、そして正面の回る間にも多くの桜が植えられており、非常に多くの桜が植えられているな、という印象を受けた。

妙顕寺ホームページ⇒https://www.shikaishodo-myokenji.org/

 

妙蓮寺

 続いて訪れたのは妙蓮寺。
 本堂向かって右手に「御会式桜」と名付けれらた桜があり、背は高くなく、また枝も細く小振りな桜だが、濃い桃色の花弁が印象的な桜だ。

 一番の見所としては、本堂向かって左手に日像上人像が設置されているが、その周辺に花弁の重層ができていた。
 更に本堂の左手にも、数本の桜が咲いていた。
 

妙蓮寺ホームページ⇒http://myorenji.or.jp/

 

本法寺

 予定にはなかったが、道を歩いていたら、ここにも桜が咲いているじゃないか、と入った本法寺。
 本堂と開山堂の間の2本の桜が満開を迎えていた。
 更に多宝塔の手前でも桜が花開いており、多くはないが効果的な配置?で桜の姿を見ることができた。

本法寺ホームページ⇒http://eishouzan.honpouji.nichiren-shu.jp/

 

水火天満宮

 最後に訪れたのは、水火天満宮。
 境内は本当に狭いのたが、その狭い境内から空を仰げば、大部分の視界の中に紅枝垂桜の花弁が映り込んでくる。境内を覆うような天蓋、とまではいかないが、あっちを見ても、こっちを見ても、という密度の高さは、感嘆に値する。

 時刻は16時に迫ろうとしていたか。
 その時、一瞬だけ雲間から日差しが周囲を明るくした。色合いだけのことを言ってしまえば、日差しは紅の印象を薄めてしまうが、それ以上の輝きが花弁のいたる所に宿り、光景としての印象をより強くさせる。
 それを見る者の感慨は深まり・・・やはり、桜は日差しの下で見るのが一番美しく思えた。

水火天満宮ホームページ⇒http://suikatenmanguu.com/

 

 最後に堀川通を北大路通りまで足を延ばして、游月の「北山ちーず」を購入し予定完了。

 では、毎年恒例の勝手にランキング。
 なお、京都御苑については去年も3位に選んでいることから、今年は選外とする。
 1位は妙顕寺。桜の本数として一番多く思われ、また、それぞれの桜が効果的に植えられている印象を受けた。簡単にいうならば、どの桜を写真に収めようとしても、なんらかの建造物と並んで撮影ができるという点だろうか。もちろん桜がメインとなるのだが、寺社を訪れて桜を見物する目的は、やはり寺社の建造物のとのコラボレーションであることが望ましい。それを『京都の桜』という価値とするならば、妙顕寺は様々に京都らしい桜を見ることができると言って良いだろう。、
 2位は本満寺。なんと言っても枝垂桜の存在感が大きい。この一本で足を運ぶ価値は充分にある。後は時期を上手く捉えることができれば完璧だ。
 3位は水火天満宮。境内の空に舞う紅枝垂の花弁の連なりは一見の価値があるように思われる。
 そして最後に。ランキング外で今回の桜見物におけるベストの桜を挙げるならば、上京区公園の紅桜。もちろん、時期的なタイミングもあったが、今回に限っていえば、一番心動かされた一本だった。きっと、地元の人に愛される一本なのだろうと思われる。

 今回全体の印象としては・・・本満寺、妙顕寺、妙蓮寺、本法寺と、なんか日蓮宗の寺院が多かったなと。
 日蓮宗と京都は歴史的に見ても深い繋がりがあるが、日蓮宗と桜はどんな関係があるのだろうか?試しに「日蓮宗 桜」でネット検索をかけてみた。すると、日蓮宗の総本山である山梨県にある久遠寺にも樹齢400年を超す枝垂桜の木があって有名だそうだ。
 日蓮宗は旧名日蓮法華宗とも呼ばれ、妙法蓮華経を宗旨の中心に据えている。
 ん?日蓮と桜。
 桜⇒華
 日蓮と華
 蓮華⇒蓮華経?
 ・・・んな訳ないだろうが、どうやら日蓮宗の寺院に桜は馴染み深いもののようだ。

 それにしても、振り返ってみると3年連続で天気に恵まれてない。
 晴天ばかりが桜の魅力のすべてではないが・・・やっぱり晴天が恋しい、ここ数年の桜見物。

(2017/04/24)

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